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2026-10-2 経営管理 KPIと運用

KPIの先に行動を置く

KPIを設定すると、業務の状況を数字で把握できるようになります。ただ、KPIを設定しただけでは、必ずしも業務は改善しません。例えば、処理件数が目標を下回っているということが分かったとしても、それだけでは、では、何をすればよいのかまでは分からないからです。数字の変化を見つけることと、その原因を特定して行動することは別の話です。そこで、KPIを管理する際には、どの数字がどう動いたら、何を確認し、どのようなアクションを取るのかまで決めておくことが有効です。特に組織が拡大し、管理者の経験やマネジメント能力にばらつきが出てきた場合には、この仕組みが効いてきます。

※本投稿では、事務手続き審査を行うサービス業を軸に展開していきます。

ステップ➀ KPIを体系化する

まず、管理したいKPIを体系化します。例えば、最終的な結果を示すKPIと、その結果を生み出す先行指標を分けて整理します。事務処理の生産性という結果があるなら、その下に一次処理件数、差戻し件数、処理にかかる時間など、結果に影響する指標を置いていきます。さらに、事務処理段階別の習熟度別人員数や、講師対応が可能な人員数など、人員の状態も合わせて見られるようにします。こうしておけば、処理件数が落ちたという結果だけを見るのではなく、どこからどのように数字が崩れているのかを追えるようになります。KPIをツリーとして整理する意味はここにあります。どの数字が動いたときに、全体の結果にどのような影響が出るのかを把握できるようにしておくのです。

ステップ② KPIの変化とアクションをつなげる

次に行うのが、KPIとアクションの設計です。例えば、ある審査を伴う事務処理サービスを考えてみます。管理するKPIとして、次のようなものがあるとします。

  • 事務処理件数
  • 1次処理件数
  • 2次処理件数
  • 3次処理件数
  • 差戻し件数
  • 回転率(ストック/フロー) ※ 事務処理の溜まり具合と掃け具合の関係性
  • 事務処理段階別の習熟度別人員数
  • 講師対応可能者数 ※新人や中途入社者へ教育できる人=講師

これらの数字を定期的に確認し、異常や差異があった場合には、次の3段階でPDCAを回します。

1.チェック
まず、数字に差がないかを確認します。見るべき差異は、大きく3つあります。

1)類似との比較
同じような業務を行っている他チームと比べて差がないか。(事務処理のチームが複数あると想定)

2)目標との比較
設定した目標値と比べて差がないか。

3)推移との比較
過去の数字と比べて、急激な変化や継続的な悪化がないか。

単純に目標を達成したかだけを見るのではなく、複数の比較軸から数字を見ることで、問題の兆候を捉えやすくなります。

2.問題を特定する
差異が見つかったら、次になぜ数字に差異があるのか、を考えます。ここでは、問題を大きく二つに分類すると整理しやすくなります。

〇生産性の問題
案件を処理する人の能力や業務環境に関する問題です。例えば、習熟度が低い、システムが使いにくい、新人へのフォローが足りない、といったものです。

〇案件性の問題
処理している案件そのものの性質に関する問題です。例えば、難易度の高い案件が偏っている、特定の案件で外部専門家への確認が多い、回答待ちが発生している、といったものです。

この二つを分けるだけでも、人の問題なのか、案件の問題なのかが見えやすくなります。

3.アクションする

問題が特定できたら、具体的な対応に移ります。ここで大切なのが、誰が何をするのかまで決めておくことです。例えば、次のような場合別のガイドラインをあらかじめ用意しておきます。

例① 習熟度が低い
分類:生産性
想定される問題:知識・経験が不足している人が多い

この場合、責任者は勉強会の実施を指示し、管理者は対象者を特定して勉強会を開催する、といった役割分担を決めておきます。

例② 執務環境に問題がある
分類:生産性
想定される問題:使用しているシステムの反応が遅く、処理に時間がかかっている

この場合、責任者はシステム改修を依頼し、管理者はどの処理でどの程度時間がかかっているのかを調査し、改修内容を具体化します。

例③ 新人へのフォローが不足している
分類:生産性
想定される問題:質問を受けられるベテランが少ない

責任者は人員配置や役割を見直し、管理者は決められた役割を現場に徹底するとともに、現場リーダーを教育します。

例④ 案件の難易度が高い
分類:案件性
想定される問題:難易度に応じた案件配分ができていない

責任者は案件の配分ルールを策定し、管理者は現在の配分状況を調査したうえで、ルールのたたき台を作ります。

例⑤ 外部専門家からの回答が遅い
分類:案件性
想定される問題:質問をしても回答までに時間がかかる

責任者は専門家側と回答に関する運用方針を協議し、管理者はどの案件でどの程度の遅延が発生しているのかを調査します。

このように、KPIの数字に差異が出たら、まず差異を確認し、次に問題を分類し、その問題に応じてアクションを取る。この一連の流れをあらかじめ設計しておきます。

KPI管理表ではなく行動ガイドラインにする

ここで作るものは、単なるKPIの一覧表ではありません。この数字が悪かったら、この数字を改善しましょうという管理表でもありません。この数字が動いたら、まず何を確認するのか。その結果、どのような問題が考えられ、誰が何をするのかまで整理したガイドラインです。さらに、問題によっては現場だけでは解決できません。管理者が自分たちで対応できる問題なのか、責任者の判断が必要なのか、他部署への依頼が必要なのか、外部パートナーとの調整が必要なのか。ここまで整理しておくと、数字に異常が出たときにとりあえず現場で頑張るという対応になりにくくなります。

熟練者にも意味がある

こうしたガイドラインについて、経験のある人なら、数字を見れば問題も対策も分かるので必要ないと考えることもできます。確かに、熟練した管理者にとっては、その通りかもしれません。しかし、組織全体を見ると話は変わります。中途入社者が増えたり、新人の多い部署ができたりすると、管理者の経験値にはどうしても差が出ます。そのとき、問題を発見するたびに熟練者が判断して指示を出す体制では、組織が大きくなるほど負荷が高まります。一方で、ある程度の判断基準をガイドラインとして残しておけば、経験の浅い管理者でも一定の水準まで判断できます。熟練者にとっても無駄ではありません。一度目を通してこのケースならこういう対応だなと感覚的に確認するだけでもよいのです。そして、実際に運用してみて、このケースではこの対応では足りない/こういう問題もある、と分かれば、ガイドラインに追加していけばよい。つまり、ガイドラインそのものもPDCAの対象になります。

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