思考の枠組みを変える/拡げる
ビジネスで戦略を立てる、中期計画を作る、改善が必要な業務を抽出する、など思考が求められる局面は多々あります。こんな時に活用できるように、ビジネス書でよくみられるフレームワークや思考法を学ぶことがあると思います。例えばフレームワークだとSWOT分析、5フォース、PEST分析、PPM、VRIOなど。思考法だとデザイン思考、仮説思考、ロジカルシンキングなど。これらは基本という意味で習得するのはかなり有用です。書籍やビジネススクールなどで学ばれている方も多いと思います。
これら一般的なフレームワーク/思考法を用いると思考の面で(誰でもとは言いませんが)60,70点の出来は到達できると思います。しかし現代の成熟した市場では、一般的な見方で解決できる問題が少なくなってきています。資本主義の中で、解決すべき問題として挙げられる大きなものは解決され尽くしてきています。身の回りで、明らかに問題として認識できるのに解決できない事象はそんなに多くないはずです。例えばスマホは誰でも持ってますし、TVや洗濯機はいわずもがな。行こうと思えば海外旅行も行けるし、ある程度高い食事でも楽しめる。治療の技術も上がっておりがん等も早期に発見できれば治療が難しい病気、ではなくなってきました。(温暖化や貧困、インフレ/バブルなど技術や因果が複雑すぎて解決し難い問題は勿論あります)
こういう時代のため、思考の枠組みを変える/拡げる、に取組まないといけない局面に来ていると思います。今回はその考え方を5つ取り上げていきます。
考え方①:知的好奇心を持つ
まずは土台となる知的好奇心です。そんなこと?と思われたかもしれませんが、思考の枠組みを拡げるには根源的な要素です。なんにでも興味が持てる、という言い方もできるかもしれません。思考の枠組みが広い人は、興味のある幅が広いです。堅めの書籍も読むし漫画も小説も読む、旅行にいけば土地の歴史に興味が出るし、スポーツで体を動かすのも好き。数学も嗜みながら経済学、哲学、美術も好き、みたいなイメージです。ここまで雑食になる必要はないですが、複数の無節操な興味が、物事を複眼的に見る眼を養ってくれます。複眼的に見れる、ということは、体調が悪いのは運動不足ではなくハウスダストかも?業績が上がらないのはPR不足ではなくそもそも市場選択が悪い?といった思考の枠を拡げることに繋がります。
考え方②:本当かどうか疑う/前提を疑う
世の中には常識とされていることが暗黙のうちに前提となっていることがあります。仕事でうまく成果が出せない人が、自分ってなんて仕事ができないんだろう、スキルが足りてないな、という前提を置いていたとします。しかし、実はその方は実力が本来ある人で、スキルの欠如ではなく組織の文化だったり周りの人との噛み合わせといった環境が悪かっただけでした。こうした暗黙の前提が異なるだけで全く違う結果を生み出すことになります。そこで必要なのが、それは本当か?と疑うことです。前提というのは実は明言されていなかったり、揺れ動いたりするものなので把握することが難しいです。しかし、何か自分が暗黙のうちに前提としていることはなにか?それって本当か?と自問自答することにより、違った思考の拡がりをもたらしてくれます。人材の求人で外国の方ばかり来て困っている、と思ったら実は日本語を読み書きできる人、という前提が抜け落ちてた、なんてことも。特に自分自身を否定するような本当か?というのは心理的にも難しいですが、行き詰ったら実践するのもありです。
考え方③:極端に振れる
①で複眼的に見て、②で前提を疑って、その次は強引に逆に振ってみる、です。これは強制的に極端な逆を考えるという意味で①②よりややテクニック寄りかもしれません。例えば、定量でも定性でも幅を持った軸を考えます。商品の売価、としましょう。現在の自社のA商品は売値は100円だとしましょう。これを110円にするか90円にするかで議論するのではなくて、思い切って1万円ならどうか。10円だとするとどうなる?と想定します。極端に振ることによって発想が転換されます。売価が1万円だとすると、買ってくれるお客さん/市場はかなり違ってくるな、どんな価値をつけないと売れないのか?と色々考えることになります。1万円で売ることを考えていたら、100円の位置づけ(価格に比べて価値を考えすぎてた、など)がはっきりしてきた、と比較することで見えてくることも出てきます。人事評価をスタッフ/マネジメントの階層ごとに綿密に組んでいたけど、むしろ評価をぶっ壊して一切合切無くすっていうのはどうか?と言った定性的に極端に振れるのもありです。
考え方④:コンセプト化
これは最も難しい考え方です。世の中の事象を昇華して纏め上げる考え方なのですが、単なる要約ではありません。要約は事実を圧縮しただけなので、思考の枠組みを拡げるには至りません。ただ要約により理解が深まりやすいという利点はあります。コンセプトはそこにプラスして、示唆的な意味合いを持ちます。次にこんな物語が進んでいくんじゃないか、こういう風景が広がっているのではないか、という感覚です。例えば、天ぷら、ハンバーグ、麻婆豆腐と種類が出てきたときに、「夜ご飯」と纏めるのが要約です。論理的に間違いではないですが、事実を述べるだけなのでふ~ん、それで?となります。一方で「和洋中」、「日本人が食べる世界の料理」、などとコンセプト化すると拡がりがあります。和洋中って響きがいいなとか、和と洋と中以外に何かないかと搔き立てられます。日本人が食べる世界の料理は、日本人って色々な国のご飯を節操もなく食べてるよね、だからこれからも海外で流行った飯とかすぐ食べるようになるんだろうな、といった風景が広がったりします。これがコンセプト化です。
以上、思考の枠組みを変える/拡げる、の考え方を4つご紹介しました。ビジネスの教科書に載っている横文字だったり難しい言葉ではないので拍子抜けした内容だったかもしれません。しかしこうした基本的に見える考え方を常日頃実践することで思考の枠組みを変える/拡げることにつながります。ビジネスで何か企画をして新しい事業を始めたり、業務改革に取り組む際に是非意識してみてください。