事業計画を立てる
そもそもなぜ計画を立てるのか。自社の目標を立て、そこに至るまでの道筋を描いて数字に落とし込むのが事業計画。目標を立てないと達成できない/競争に負ける、といったことはよく言われます。加えて、目標を立てるとどこに進むのかが明らかになる、というのが明確な理由として挙げられると思います。
企業には到達したいビジョンがあります。そこに至る中間の目標があるはずです。その中間を具体的に設定し、そして道筋も描くことで進む方向が明らかになります。逆に言うと、目標を立てないと成り行きになり、どこに向かっているかわからなくなります。ただ単に周りが事業計画を作っているから/ルールで作ることが決まっているから、ではなく、事業計画を立てる意義が高いことがわかると思います。
但し、目標を敢えて定めずにその場の状況に対応していく企業経営、という考え方もありますので、必ず作らなければいけないものというわけではありません。実際、弊社は事業計画を綿密に作らずにざっくりとした方向性だけを定めています。
今回は、事業計画の一般的な構成を解説するとともに、ココがポイント!という独自な部分を書いていきたいと思います。
■事業計画の一般的な構成
①経営ビジョン:計画期間(3~5年後)のありたい姿/将来像
②経営目標:市場シェアや財務の目標数値
③環境分析:マーケット、競合、自社の現状と将来の見通し
④戦略策定:目標と現状のギャップを埋める大方針/資源配分
⑤数値計画:方針をもとにした行動施策と数値
事業計画に限らず、まずはどの地点を目指すのか、を定めます。計画の対象期間に応じた(通常は3-5年)形で到達点を描きます。ビジョンなので、できるだけ定性的な表現を心がけます。XX市場を奪取できていること、といった状態で表現します。そのビジョンに到達できたときは、企業体としてどのような財務数値を達成できているかを目標数値として掲げます。売上XX億円、利益XX億円、など。ここまでが到達点の話です。そこから、現状分析に入ります。基本に忠実に「3C分析」市場、競合、自社を分析します。狙う市場のトレンドや規模は今後どうなるか、どんな競合がいるのか/他業界から入ってくるのか、自社の財務/事業/人材/マネジメント,の現状と今後の推移などを整理します。
ここで、掲げた到達点と現状との間にギャップが生じます。それを埋めるために、戦略を策定します。通常、成り行きで進んだ場合だと到達点に達成できません。そのため、有望な領域に人員を偏らせたり、資金を調達して需要が見込める製品を製造する新たな設備の導入、といった戦略を立てます。最後に、成り行きの状況に、方針や資源配分の戦略を加味した数値計画を作ります。各施策の実行にどれぐらいの売上/利益が見込まれるかを作り上げていきます。その数値を財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)に反映し、完了です。(事業計画策定後のPDCAサイクルがキモなのですが、今回は事業計画を立てるのがテーマなので割愛)
■事業計画のココがポイント
ここまでは一般的な事業計画の構成ですが、ここからは弊社が考える事業計画策定の際のポイントを述べていきます。
1)5年以上の長期計画を立てない
最近は世の中の変化が速いため、5年以上の長期で計画を立てると乖離が激しくなります。乖離が激しくなると計画の変更が多発することになり、当初立てた方針や資源配分の前提が覆ることになります。そのため、最近では3年程度の計画期間が一般的となっています。計画を立てるにも負荷がかかるので、毎年計画を書き換えていると負荷が多大に。5年以上だと変化が激しいので3年に落ち着いている、ということです。
2)市場環境や競合を調べ過ぎない/意識しすぎない
これは優秀な分析/企画担当の方がいる場合に陥り易い事象です。市場環境や競合を調べるのは競争戦略を立てる上で重要ではあるのですが、競合を意識しすぎるがあまり他社がやってないことをやろう、とか市場が横這いだから自社の取組みはやめておこう、といった判断になったりします。そのため、分析を精緻にするよりも、他社と被るがXXの点では~、市場をXXで捉えると実は~、といった視点をプラスすることが肝要です。
3)施策実行の担当と取組み期間を具体的に決める
企業全体の戦略が高尚であっても、現場の1人の担当と繋がっていないと成果を出すことは難しいです。そのため、施策毎に期間を定め、それを実行する担当者を割り当てることが重要です。基本的なことだと思われるかもしれませんが、意外と担当が曖昧になっている/期間が定まっておらず施策が全然進んでいないケースがありますのでご留意ください。
一般的な事業計画の立て方とポイントを解説してみました。大仰な事業計画は要りません。まずは基本に則った計画を立ててみましょう。