夏は儲かって冬は損する?(費用計算)

アイスクリームを題材として、費用計算の妙をご紹介。

一般消費者にとって、売価は売る場所や時期、キャンペーンによって変わるものという印象があります。一方で、同じモノを作る場合の費用はどれも同じに見えます。しかしアイスクリームを例にとって費用は異なる、ということを説明したいと思います。

アイスクリームを作って売るときの前提
①夏によく売れて冬は売れない
②工場で生産するとき、生産と消費はほぼ同時期
③売価は100円、材料費は1個作るとき50円、製造設備の取得費用は1,000円
④アイスクリームを1個作るときの総費用は、1個あたり材料費+製造設備費÷個数
⑤減価償却費、物流費、製造人件費、在庫などは簡略化のため割愛

上記を前提にし、アイスクリームを製造し、店舗で販売を始めました。夏場:100個、冬場:20個、の販売結果になりました。この結果だけみると、夏場の方が売れたのだから夏の方が儲かっているに違いない、のがその通りなのか?売上/利益/費用の構造を分解して捉えてみましょう。

<夏場>
売上:100円×100個=10,000円
費用:材料費50円/個×100個+製造設備費1,000円÷100個×100個=5,000円+1,000円=総費用6,000円
利益:4,000円

<冬場>
売上:100円×20個=2,000円
費用:材料費50円/個×20個+製造設備費1,000円÷20個×20個=1,000円+1,000円=総費用2,000円
利益:0円

売上に差がついているのは自明ですが、注目すべきは費用です。特に製造設備費。同じ製造設備で製造する場合、夏場で100個作る場合は1000円の設備費用が薄められて1個あたり10円になります。冬場で20個作る場合は1000円の設備費用がそれほど薄まらず1個あたり50円になります。結果として1個あたりの製造設備の費用の振り分けに5倍の差がついています。

売上は5倍(2,000円→10,000円)になっていますが、費用は3倍(2,000円→6,000円)にしかなっていません。ここが儲けの違いです。

これは製造業の固定費(今回は製造設備)の数量を分配する際に起こる考え方です。こうした考えを念頭に費用と利益を捉えるとよいかもしれません。