今回は、KPIの小難しい話は脇に置き、世の中の面白いKPIを取り上げてみます。自社にそのまま当てはまるものではなかったり、組織の中の位置づけが異なったりするKPIもありますが、発想のヒントとして使えるものがあると思っています。結果KPI=KGIのレベルだと財務や業績の属性のものが多く一般的になりがちなので、中間のKPI=先行型だったり、業務を可視化するKPIのうち世の中で一般的に取り上げられているのとは観点が異なるものを取り上げていきたいと思います。
■文化・行動を可視化するKPI
①コーヒー消費量
定義:従業員1人あたりのコーヒー消費量を測る
方向:高いほど良
詳細:オフィス滞在時間によるチームの交流の密度を間接的に示す。
→ワイガヤで意見を昇華させたい組織に有効
②Rage Click(怒りクリック)
定義:ユーザーがweb上で同じ場所を連打する回数 UXのストレスを直接測る
方向:多いほど改善箇所
詳細:顧客の感情を先行指標として捉える
→UXがまだ柔らかい段階で試行的に用いる際に有効
③社内メール量 / Slack投稿数
定義:社内のメール数とslack投稿数を測る
方向:適正なレンジ内だと良
詳細:交流が多すぎる=非効率、少なすぎる=分断と適正レンジを見る、成果を生み出しているチームの量を参照にする
→交流量と成果との相関を調べたいときに有効
④会議時間比率
定義:労働時間のうち会議に使われた割合
方向:適正なレンジ内だと良
詳細:会議が多いほど意思決定が遅い可能性があり、意思決定の速度を時間構造で測る
→会議が増えてきたな、と感じる時に有効
⑤会議での発言比率
定義:会議で発言した参加者のうちの発言者の数/割合
方向:多いほど良い
詳細:一部に人だけが話していないかを可視化、人数を適切に絞る動機付けにも
→会議のメンバーがなんだか増えてきている、若手が発言していないと感じる時に有効
■業務を可視化するKPI
⑥有難う回数
定義:顧客/社内部署から接客/対応時に有難うを言われた回数(もしくは有難うシールを相手に付与)
方向:多いほど良
詳細:どんな行動をすればお客様からありがとうを言われるかを考えられるように
→売上至上主義から脱却したいときに有効
⑦1人当たり顧客への複数人接客回数
定義:1人の顧客に、2人以上の人員で接客ができた回数
方向:多いほど良
詳細:丁寧で手厚い接客と満足度向上を方針として掲げる際に、複数人での接客を行う
→1人複数役で丁寧な接客に限界を感じている時や高級感を打ち出していきたい時に有効
⑧顧客資料のスライド採用枚数
定義:PJで作成したスライドのうち、顧客に見せる(社内の上層部に見せる)資料に採用された枚数
方向:多いほど良
詳細:無駄なスライドを内々で量産していないかの指標になる
→とにかくスライドを作りすぎる文化になっているときに有効
⑨社内資料閲覧/ダウンロード回数
定義:社内の共有財産として保管している資料が閲覧/ダウンロードされた回数
方向:多いほど良
詳細:閲覧が多い資料の共通化や、どんな情報が望まれているかの分析
→ナレッジの共有を進めたい時に有効
⑩情報の手入力率
定義:システムに入力する必要な情報を、システム間で自動連携されず手入力したデータの割合
方向:少ないほど良い
詳細:デジタル化やDXの実態を炙り出す。人に考えてもらうために敢えて手入力割合を増やす考えも有
→DXの効果が本当に出ているかを泥臭く検証したいときに有効
⑪マネジメントスパン(部下の数)
定義:管理職1人あたりの部下の人数
方向:適正なレンジ内だと良
詳細:狭すぎると過剰管理に陥り、広すぎる統制不能になるので適正な範囲におさめる(一般的に1人の上司につき7名まで)
→組織が急拡大したり異動が多い時など、管理の範囲が適切か可視化したい時に有効
■行動を強制するKPI
⑫解約理由の回収率
定義:解約顧客のうち理由を取得できた割合 データ取得そのものをKPI化
方向:高いほど良
詳細:分析する前にデータをまず取ることが重要
→失注/解約などの後ろ向きな情報の取得がなおざりになっている時に有効
⑬決裁リードタイム / 決裁残留平均件数
定義:稟議を上申してから決裁されるまでの期間、決裁者のPC上に残留している決裁件数の平均
方向:短い/少ないほど良
詳細:決裁の円滑化・短期化を図る。滞留が多過ぎれば階層を分割、廃止するなど
→社内の意思決定や決裁がなんとなく遅れているような気がするといった時に有効
⑭顧客ヒアリング項目充足率
定義:定義されたヒアリング項目の取得率
方向:多いほど良
詳細:営業の属人性を解消して標準的なヒアリングの品質を上げる(標準化への志向)
→人によって聞き取り項目にバラつきがある時/着地に違いが大きい時に有効
■変わり種(設計思想が面白い)
⑮管理KPI数
定義:チームが管理するKPIの数
方向:少ないほど良い(集中度)
詳細:測るものを減らすという逆方向のKPIで時間の集中を図る
→KPIが増殖しだしてきて計測の手間やひとつひとつの目標追求が薄くなっている時に有効
⑯Not to do遵守率
定義:やらないと決めたことを守れた割合(今期は取組まない目標や、基準以下の属性の顧客への接触)
方向:多いほど良い
詳細:捨てる戦略の一貫性を測る、項目によっては計測が難しいことも
→捨てると決めたことを遵守できていないことを可視化して突きつけたい時に有効
⑰仮説検証回数
定義:一定期間で回した検証数 スタートアップで有効
方向:多いほど良
詳細:成果ではなく学習速度をKPI化、開始と終了の定義が肝
→なんとなくバラバラに仮説を検証して前に進んでいる感が得られていない時や過去の検証を活かしたいときに有効
KPIは、単に測るためのものではありません。設計次第で、組織の行動は意図した方向にも、意図しない方向にも簡単に歪みます。だからこそ重要なのは、何を測るかではなく、「どんな行動を引き起こしたいのか」を起点に設計することです。本記事では17個のKPIを取り上げましたが、重要なのは個々の指標そのものではなく、その裏にある考え方です。どのKPIも、特定の状況において行動を変えるための“仕掛け”に過ぎません。自社にそのまま当てはめるのではなく、「どの違和感を可視化したいのか」「どの行動を促したいのか」という観点で捉え直していただくと、KPIはより機能するはずです。自社の業務を抉る際のヒントになれば幸いです。





