DXが進まない2大背景

DXに取組んだのはよいものの、何か上手くいっていないのではないか、と感じる企業様が多いかと思います。これは識者が述べるように、そもそもDXの目的が不明確、デジタル技術で何ができるかのイメージが乏しい、推進の専門組織が不在、DXに充てられる人材の不足、などなどが挙げられています。

もちろんそうしたご指摘もその通りだと思うのですが、DXを根付かせるための背景という側面も考慮する必要があるのではないかと思っています。背景がDXに即していなければ、その上の展開の場面でDXが進まなくなるのは道理だと考えます。

その日本や日本企業に横たわる(私が考える)大きな背景を2つ挙げてみます。


日本企業は、戦後以降、職務記述を明確にしないメンバーシップ型の雇用がメインでした。職務や勤務地を限定せずに長期的な人材育成を図る形。重要なのは、「人に仕事を合わせる」という考え方。人が主体なので、人が変わると業務の遂行の仕方や受け持つ範囲が変化したり、その人独自の個別の工夫が入ったりします。(職人芸のエクセルマクロなど)人に仕事を合わせることは瞬間的には効果が高いのですが、積み重なると属人化が進み標準化がしづらくなります。一方でデジタル化で効率化を図ることは、基本的に仕事が定型/標準化(=0か1かはっきりしている)されていなければなりません。定型/標準化されて初めてデジタル化で効率化ができます。この互いの考えが水と油のようになり、DXの推進が阻害されることになります。

これは先進国あるあるなのですが、過去に築き上げた資産や習慣に馴染みがありそれほど不便を感じない、かつ現状を維持しようとするバイアスがかかり、新しいことに取組むのが億劫になる(自然と避ける)パターンです。例えば、以下のような例です。

・戸籍制度が優秀で残り続けており、マイナンバーが普及しづらい
・現金が盗られにくいため、キャッシュレスが進まない
・手書きの文字が欧米人に比べて読みやすいため、デジタル署名が浸透しづらい
・FAXが便利で日常使いしているため、メールやchatツールに移行する気がおきない

まずこの2つの大きな背景が残り続けている限り、DXをすみずみまで浸透させるということは難しいかもしれません。