7割が失敗するプロジェクト--------その本当の要因とは?
今回はプロジェクトに触れていきたいと思います。プロジェクト、と聞くと大仰な印象を持たれるかもしれませんが、将来が見通しづらい世の中で今やどんな企業でもプロジェクトを組成して取組む時代に来ています。そこでまずプロジェクトとは何なのか、ということから始めたいと思います。プロジェクト、と言われるが、普通の業務と何が違うの?ということです。そして後半で、プロジェクトの成功率や、失敗要因について触れていきます。
プロジェクトは、「目標に向かって、唯一独自で有期性があって不確実性が存在する業務」のことを指します。ここで重要なのは、「独自性」「有期性」です。通常の業務の延長線上には無いという意味で、プロジェクトというものが立ち上がるため、独自性が高いものとなります。定常的に発生する業務とは別の業務として、非定常として組成するものです。そして非定常の業務には、必ず有期性も伴います。定常業務であれば、締切や期日はあるものの次の週や月、年になればまた繰り返しやってきます。しかしプロジェクトは1回こっきりです。もしかしたら類似のプロジェクトだったり継続したりするものもあると思いますが、そうであっても同一の業務ではないため、基本的に繰り返しの性質は低いです。
唯一無二の業務であるため、達成のためのアプローチも専用に設計する必要がありますし、必要な人員やスキル、技術や設備なども個別に準備する必要があります。また、重要な点として、唯一無二で非定常であるため、不確実性が伴う=必ず成功するとは限らない、ということです。定常業務であれば、ほぼ確実に処理(=成功)を遂行する必要があります。経理の処理や社内稟議の処理は、確実に行えないと組織が円滑に回りません。一方で非定常の業務で、定常業務の延長線上にない目標を掲げる場合、基本的には高い目標、未知の業務、不明瞭な進め方、途中でのつまずき発生、になってきます。そのため失敗するリスクを大きく持っています。そのハンドリングのために、プロジェクトマネジメントという技法が存在するわけです。
2022年の企業IT動向調査報告書によると、東証一部上場企業とそれに準じる企業のプロジェクトの失敗率は極めて高い約69%となっています。半分以上は失敗しているわけです。失敗とは、品質、コスト、納期、ROI、期待値、などの点において充足していなかったということを指します。プロジェクト、といっても業務改革、コスト削減、戦略策定、システム導入など多岐に渡りますが、弊社が関わってきた/見聞きしてきた中で失敗に繋がったであろう要因を挙げてみます。プロジェクト管理の技法面の要因も多くありますが、より根本的な要素に絞って記載します。(社内だけのプロジェクト、社外ベンダーの参画も含めたプロジェクトとありますが厳密に切り分けていません)
①目的/ゴールが不明確
これはプロジェクトに限らず全ての業務に言えることですが、どこに向かっているかわからずに進んでいってしまうため失敗する、というものです。ゴールの設定なんて当たり前のことでは?と思われるかもしれません。しかしゴールの記述が曖昧であったり、壮大過ぎてブレイクダウンしないとひとそれぞれで解釈が異なる、というのは普通に発生する事象です。そのため都度立ち止まってゴールを何度も確認する、曖昧なゴールは分解してクリアにしながら進める、といったことが必要です。しかし、ゴールの状態を描くというのは意外に難しく、抽象的な思考ができないと設計がままなりません。しかし意識してこの失敗を避けようとすることはできます。
②要件や必要な意思決定が曖昧なまま進捗
システム導入の際の要求機能の定義や、業務のルールや基準の判断などが必要な局面で起こりがちです。システムの導入の際、今の業務をシステムで効率化したいとなったときに、どこまでが人手で残って、どこからがシステムなのか、システムに入れる情報と出てくる情報はどんなものか、何を効率化したいのか、といった部分が想起できていないと曖昧な要求機能になったりします。システム導入の後半部分で変更が多発したり、システム導入後に使えない、といったことが頻発します。業務のルールや基準については、新たな業務で運用するとなった際にルールや基準を変更します。しかし、何が正解かわからないので、後で判断しよう、とか今のままでいいんじゃないか、様子見しようと後回しにしたりします。これがずるずるといって期間の長期化を招いたり、どっちつかずなルール変更に留まってしまったりします。
③当事者意識が希薄
①と②にも関わってきます。これはシステム導入の際は特に顕著で、ベンダーに任せっきり/丸投げ、というもの。システムを使うユーザー側が要件を定義しないといけないのに、ベンダーさんで要件纏めてよ、他社事例とかで。といったことが起こり得ます。自らがシステムを作り上げていくという意識が希薄です。恐らく、自らが頭をひねって業務を想像して考え抜くことが苦手なのと、どこかに業務の運用の正解があってそれに従えばいいんだ、ベンダーさんそれを教えてよ、というスタンス。こういうスタンスがゴールの不明確さだったり、要件が不明瞭のまま進んでいくことになります。
他にも非現実的なスケジュールの策定や、リスク対応が不十分、役割分担が不明瞭などありますが、より根本的な要素として3つ挙げました。これからプロジェクトを組成して企業や組織を変革したい方は、今回挙げた3点をまずは意識してはいかがでしょうか。