2025年版に引き続き、2026年版を読んでいきたいと思います。今年の白書は35Pで構成されております。
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2026/pdf/gaiyo.pdf
注目する箇所に焦点を絞って取り上げたいと思います。一部資料にない追加情報のコメントも加えています。
➀収益力の高い企業ほど設備投資に積極的
将来に向けた投資を行っている企業は、中長期的な視点で競争力を高め、その成果として収益力を向上させています。一方で、直近の資産効率を高めることを重視しすぎると、必要な投資まで抑制される可能性があります。日本企業では、デフレ環境やリーマンショック、コロナ禍などを経験する中で、手元資金を厚く保有する傾向が強まったと言われています。しかし、投資を控えることで競争力が低下し、さらに収益力が低下するという負の循環に陥る可能性があります。もちろん、設備投資は単純に増やせばよいものではありません。将来的な収益力向上につながる投資を見極め、実行することが重要になっています。

②製造業のデータ基盤と製造AX
AIやデジタル技術の進展は後戻りできない変化であり、今後の製造業における競争力向上に不可欠な要素になるとされています。一方で、多くの企業では、AIやデジタル技術を導入・活用できる人材不足が課題として認識されています。また、企業や業界を横断したデータ連携についても、十分に進んでいない状況が示されています。特に、企業間でデータを共有・活用するためには、関係者間の調整や連携の難しさといった課題があります。また、蓄積されたデータを活用し、新たな価値やビジネスを創出するための発想力・創造力も求められています。今後は、単にデータを蓄積するだけではなく、データを活用して新たな価値を創出する仕組みづくりが重要になります。また、AIロボティクスの発展により、今までの生成AIでは代替できないと言われてきた物流、建設、小売、介護など、これまで人が担ってきた物理的な業務にも大きな変化が起こる可能性があります。


③調達先の多角化とサイバーセキュリティ強化
近年、地政学リスクやサプライチェーンの不安定化を背景として、調達先の多角化やサイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。これらの取り組みは、短期的な売上向上には直接結びつきにくく、直接目に見えない分問題が発生するまで効果を実感しづらい領域です。そのため、目先の売上や短期的な成果を優先する企業ほど、後回しになりやすい傾向があります。しかし、調達網の寸断やサイバー攻撃は、発生した場合に事業継続へ大きな影響を及ぼします。安定した事業運営のためには、日頃からリスクへの備えを経営課題として捉えることが重要です。

〇2025年版と2026年版の違い
2026年版ものづくり白書では、2025年版から引き続き、人材不足/育成、経済安全保障など、製造業が抱える課題が取り上げられています。その上で、国際情勢の変化や技術革新によって不確実性が高まる中、企業がどのように競争力を維持・向上させるかという視点がより強調されています。特に差異として注目されるのは、AIやデジタル技術の位置づけです。従来のDXは、業務効率化や省人化を目的とした取り組みとして捉えられることが多くありました。しかし、今後は生成AIなどの技術を活用し、労働生産性の向上につなげるなど、経営戦略の一部としてデジタル技術を活用することが求められていると読み取れます。また、資本装備率に関する議論も注目されます。人手不足が進む中、現場の努力や経験だけに依存した生産性向上には限界があり、今後は設備投資やデジタル投資によって一人当たりの付加価値を高める経営への転換が求められています。投下資本から生み出される価値を重視するROIC経営とも問題意識が共通していると感じられます。





