顧客像と課題
新規事業を始める場合、よく言われるのが顧客像(ペルソナ)の重要性です。想定する顧客の人物像を具体化し、その人物が持つ課題は何か?を考えることです。新規事業は顧客の課題を解決するために興すものであり、想定した顧客が持つ課題として適切かどうかを検証することが大事です。お腹が一杯の顧客に新たな食べ物を提供する、という解決策は刺さらない、という状況が起こらないように、顧客像×課題をセットで考えます。
新規事業の検討で顧客像と課題を練り上げる中で陥りがちな事象を列挙していきます。
①顧客像と課題を最初に考えたがその後使われない
大手企業で新規事業推進チームが立ち上がった際によくある例です。新規事業を立ち上げた件数の実績がKPIになってしまっていたり、新規事業を本業の片手間に行ってしまっているケースだと起こりがちです。せっかく新規事業の顧客像と課題を時間をかけて練り上げたのに、立ち上げた瞬間に達成感が漂い、使われなくなってしまいます。別の事例では、解決策の作り込みに意識がいきすぎて、そういえば誰向けのどんな課題を解決する商品だったっけ?となってしまうというケースがあります。解決策の検討は自社の得意領域である場合も多いので、往々にしてあります。
②顧客像を考えたが、市場規模が狭すぎる
個人レベルまで解像度を上げて顧客像を作れ、と言われることから発生してしまうケースです。解像度を上げるのはよいことなのですが、解像度を上げる領域がニッチで顧客が極端に少なく、市場規模が小さくて商売になりづらくなってしまうことがあります。特定の地域の特産品、特定の産業向けの無線通信機器系、特定の宗教向けのサービスなどなど。(狭い領域であっても独占してその後展開していくという考え方もあるのでこの限りではないのですが)
③顧客像が広すぎて課題や解決策が抽象的になる
②とは逆で、市場規模を広く取りに行こうとしすぎるがあまり、顧客像が広すぎてそれに対応する課題や解決策も抽象的になるケースです。例えば、顧客像:20代男女、課題:出会いの場が少ない、解決策:マッチングプラットフォームを作る、となると一見市場規模が広そうですが、セールスポイントや差別化、競合の話も含めると筋が悪そうだな、安易な感じになってしまったな、となります。これは市場規模をなるべく大きく、と考えるよりも顧客や事業の解像度が低いことから起こることだと考えます。
④顧客像と課題を適切に考えたが、状況/前提が抜け落ちている
顧客像と課題を適切な形で考えたが、意外に重要な状況/前提が抜けてしまって現実性が低い、となるパターンです。例えば、顧客:喉が渇いている、課題:水分が欲しい、で状況:周りに無料のウォーターサーバーがある、だと解決策で格安の水を提供する、が状況的に勝てるシナリオが描けないことになります。この場合、顧客像と課題を描くだけでなく、顧客の購買の際の状況をリアルに想像し、購入に至る動線や動機があるかを検証する(カスタマージャーニー手法など)ことが必要になります。