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2025-11-7 戦略 戦略の思考

量から複利へ──投資で見る“骨太な経営”の構造

今回は少し目線を変えて、事業をよく知る現場からの経営というよりかは、投資の側面から経営を見ていきます。もちろん現場から立脚する経営も重要なのですが、お金を投入してのリターンという別の側面での考え方を取り入れることで経営がより骨太になるのではないかと思っております。

人・時間・資本の制約が強まる中で、「どれだけ働くか」ではなく「お金や資源をどう働かせるか」が、経営の質を決める時代になっています。売上や利益の増減だけでは測れない、“お金の使い方”そのものが企業価値を左右するようになっています。

事業を運営する際に、売上から費用を引いた利益を増やすことを考えます。これ自体は基本の考え方としてなんら否定するものではありません。ただこの考え方には投資と時間という考え方が抜けています。単年度だけの話であればこれでOKなのですが、事業というものは半永久的に続いていきます。そうすると上げた利益を次の売上確保のために投資に回していく必要があります。単年度だけでなく、5年10年といった中長期で考える必要があることがわかります。この辺りを4つの観点として詳しく見ていきましょう。

➀量の経営

最も馴染みのある「量」の経営です。これは売上や利益といった金額を単純に大きくすることを基本思想とします。去年よりも多くの売上と利益の額を上げることを狙います。経済自体が成長し、企業もそれに伴って成長できる時代において、量の拡大を狙うこの考え方は上手く作用していました。しかし成熟した市場では、単純に量を追求することは市場が伸びていかないので他社から奪う必要があり、難しくなってきています。売上金額や利益金額が典型的な指標となります。

➁率の経営

次はまだ馴染みがあると思われる「率」の経営です。これは単純な額を拡大する考え方ではなく、どれだけ効率よく売上やキャッシュを増やせたかを重視する考え方です。効率に着目しているため、図体のでかさよりも筋肉質であるかどうかが問われます。市場が成熟してくると、量の拡大を狙うのは難しいので、より速く短く行うことによる効率を求めた方がよい、と転換されてきた考え方です。売上高営業利益率などが典型的な指標となります。

➂利回りの経営

ここからは少し馴染みが無い考え方となりますが、「利回り」の経営です。効率を考えるのではなく、投下資本に対してどれだけ効率よく利益やキャッシュフローを生み出しているかを重視する考え方です。➁の率の経営では、元手の話は一切無かったですが、この考え方では利益やキャッシュ(=アウトプット)を生み出す源の大きさ(=インプット)を考慮します。100円の元手で1,000円儲けるのと、10円の元手で1,000円儲けるのでは、儲けは同じでも、後者の方が10倍もアウトプットが出ているとみなします。ROI(投資対効果)が典型的な指標となります。

④複利の経営

最後に、経営で目指すべき考え方である「複利」の経営です。➂と同じで元手を投資していく考え方ですが、違いが2つあります。1つは再投資です。利回りの経営は1回きりの投資に対してどれだけのアウトプットか、でしたが複利の経営では、生まれたアウトプットと元手を足し合わせて再投資していきます。もうひとつは時間の概念です。生まれたアウトプットと元手を足し合わせて再投資していくと、時間が経つほど、投下資本そのものが指数関数的に増えていきます。この複利による増殖を狙います。後述する単利と複利の違いによって、長い時間軸で考えると投下資本とそれに応答する利益やキャッシュは大変大きな差になります。ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)が典型的な指標となります。

参考)単利と複利の違い

単利は元本に対して一定の利率をかけ、期間ごとに利息が計算される方法です。例えば、元本が100万円で利率5%の場合、1年間で利息は5万円となり、毎年5万円が加算されます。5年後の累計は125万円になります。一方で複利は利息が元本に加算され、次の期間の利息がその合計額に対して計算される方法です。例えば、元本が100万円で利率5%の場合、1年後には5万円の利息がつき、翌年からは105万円に対して利息が計算されます。5年後の累計は127万6千円程度になります。結果として、複利は時間が経つにつれて利益が加速する特徴があります。このように、単利は利息が一定ですが、複利は利息が累積して増加します。複利の方が長期間で見ると有利となります。③の利回りの経営が単利で、④複利の経営が複利を指しています。

ここまで4つの観点を見てきましたが、市場が極めて成熟してきている日本では、量や率で経営を考えるには不十分で、最低でも利回りの経営が求められます。そして中長期的な目線で企業を持続的に成長していくためには、複利の経営が必須になってきます。量の経営では、短期的な目線のみでの取組み施策になってしまったり、短期での失敗が許されない文化を作ってしまったりとデメリットが多くあります。また蓄積して増やすという「資産」の発想が薄いため、経営がぶつ切りで繋がりが無かったりするのも良くない点です。いかがでしたでしょうか。まずは自社がどういう観点で経営を営んでいるかを把握してみるところから始めてみて、骨太な経営を目指していって頂ければと思っています。

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