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2026-1-23 戦略 データ分析と統計

複数広告の効き方を整理 マーケティングミックスモデリング入門

織り込みチラシ、ポスティング、検索連動広告、SNS広告など、複数の広告を同時に出していると、全部それなりに効いていそうだが、どれを増やし、どれを減らすべきか分からないという状態に陥りがちです。この配分の迷いに対して、感覚ではなくデータで答えを出そうとするのが、マーケティングミックスモデル(MMM)です。今回はそれ取り上げていきます。(複雑な計算式や数学的背景は除外し、考え方や活用イメージをわかりやすくしています)

■マーケティングミックスモデル(MMM)とは何か・何に用いるのか

MMMとは、売上を結果として捉え、複数のマーケティング施策が同時に売上にどのように影響しているかを整理する分析手法です。個々の広告を単独で評価するのではなく、組み合わせとして見たときの影響を捉える点が特徴です。デジタル広告だけでなく、テレビCM、販促活動、季節性などの外的要因を横断的・統合的に評価できる点がMMMの最大のメリットです。

主な用途としては3つあり、
① マーケティング効果の測定
複数広告を同時に出している中で、売上に各施策がどの程度関係していそうかを整理し、相対的な効き方を把握する。
② 広告予算などの予算最適化
効果の出やすい施策に予算を寄せ、伸びにくい施策を抑えることで、総額を変えずに売上効率を高める判断に使う。
③ 予算配分のシミュレーション
予算を増減させた場合の売上の動きを想定し、「この配分ならどうなるか」を事前に検討する材料として活用する。

■考え方/概要

MMMのベースにあるのは、重回帰分析という考え方です。重回帰分析は、結果はいくつかの要因が同時に影響して決まっているのでその影響を分けて考えようと整理する考え方です。これは数式で表すと、非常にシンプルに書けます。

売上 = a + b1 × チラシ配布量 + b2 × 検索広告費 + b3 × SNS広告費

という形です。これは中学数学で習った2次3次方程式に似ています。y=3X^2-10X+10といった式です。yが結果として、xという変数を動かして場合にどうなるかという式です。xの前にある数字は、係数といってx(変数)が、結果にどれくらい影響しやすいかを表す目安です。例えば、b1 が大きければ、チラシ配布量を増やしたときに売上が動きやすい、b2 が小さければ、検索広告費を増やしても売上の変化は限定的。といった読み方をします。数字そのものの厳密さよりも、相対的な違いの理解が重要です。また、最初に出てくる「a」は、定数であり、チラシや広告を一切打たなくても発生するベースの売上を意味します。常連客や既存取引、ブランド力など、日々の広告とは直接関係しない部分が、ここに含まれます。

ここで重要なのは、数式を正確に理解することではありません。ポイントは、売上を「複数の要因の足し合わせ」として捉えている点です。

〇チラシがどれくらい売上に効いているのか
〇検索広告がどれくらい上乗せしているのか
〇SNS広告は補助的なのか、主役なのか

こうした影響を、同時に・まとめて整理するのが重回帰分析です。

例えば、チラシも検索広告もSNS広告も同時に出している状況では、売上が伸びた理由がどれなのかは直感では切り分けられません。重回帰の考え方を使うと、他の広告も出している前提で、それぞれがどれくらい売上に関係しているかを整理することができます。この整理によって、単独では見えなかった相対的な効き方の違いが見えてきます。

■実務での進め方

1)売上と広告データを時系列で揃える
まず、売上と各広告施策のデータを、月次や週次など同じ期間単位の時系列データとして並べます。

この時点では、精緻さよりも同じ粒度で、一定期間分そろっていることが重要です。

2)重回帰分析で「たたき台」を作る
次に、売上を結果、広告施策を要因として重回帰分析を行います。ここでやっていることは、チラシも検索広告もSNS広告も同時に出している状況で、それぞれが売上にどう関係していそうかを一度、機械的に整理することです。この結果から、予算を増やしても売上があまり動かなそうな施策比較的、増やした分だけ売上が動きやすそうな施策という大まかな傾向をつかみます。重要なのは、この時点では信じ切らないことです。あくまで一次案、仮説の出発点です。(以下重回帰分析のイメージ例を添付します。Excelで実施可能ですが、計算の意味合いなどは今回割愛)

3)結果を現場感覚で補正する
重回帰分析の結果は、必ずしも現場の実感と一致するとは限りません。例えば、織り込みチラシは効いていないように見えるが、新規客の入口になっている(=訪問客は増えている)や、SNS広告は売上に直結しないが、検索広告の効きを支えている(=ページビューは増えている)といった事情は、数式だけでは表れません。そこで、重回帰の結果をベースにしつつ、現場の知見で微調整します。完全に削るのではなく、最低限は残す。効いていそうな施策でも、一気に増やしすぎないといった判断を挟みます。

4)「少し動かす」予算配分を決める
最終的に決めるのは、完璧な配分ではなく、次の一手としての配分です。削る施策は、まず1〜2割。増やす施策も、段階的にという形で、重回帰分析 → 現場補正 → 小さな配分変更を繰り返します。そして最適な予算配分を調整して決めていきます。

■予算最適化のビフォア/アフター(売上の変化イメージ)

Before

チラシ:400万円
検索広告:300万円
SNS広告:300万円
合計:1,000万円
売上1億円

長年この配分でやっている、大きく外れてはいないはずという、感覚的に配分を決めているよくある状態です。

MMMを踏まえた整理後

過去データを重回帰の考え方で整理した結果、次の傾向が見えたとします。
〇チラシは一定の売上を作るが、追加投資の効果は限定的
〇検索広告は、増やした分だけ比較的素直に売上が伸びる
〇SNS広告は、単独で売上を作るというより補助的な役割

After

チラシ:250万円
検索広告:500万円
SNS広告:250万円
合計:1,000万円
売上1億500万円

総額は変えず、売上が伸びやすい検索広告に予算を寄せた配分です。この結果、売上が 1億500万円 に伸びました。(+500万円、+5%)

補足)精度を上げるために行う必要があること
・応答曲線(飽和): 広告は出せば出すほど効果が無限に上がるわけではなく、次第に効率が落ちる(逓減する)という現象を数式へ組み込み
・アドストック(残存効果): 今日の広告の効果は今日だけではなく、明日以降もしばらく残るという現象を数式へ組み込み

■最後に
いかがだったでしょうか。広告効果は一見目に見えにくいものであり、其々の効果が見極めづらいです。MMMを用いることによって完璧にではありませんが傾向を見つけ出すことができます。そして、計算式ではなく実務上の調整が実は一番重要だったりします。MMMを用いることで、勘や経験ではなくより科学的な広告配分に向けた次の一手を打っていきましょう。

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