生産マネジメントの要、計画を極める
複雑な工場を淀みなく動かしていくための高度な仕組みが生産マネジメントです。生産活動を成り立たせ、収益を確保するための指示・実行の基準を作るのが計画です。その計画で生産活動の基準値・目標値が作られ、基準値や目標値の通りに生産されたかをチェックし、差異が生じれば改めて計画を作っていきます。生産マネジメントの肝は「計画」にあります。計画には幾つか上流から下流にかけて存在し、それぞれ扱っていきます。
①生販在計画
受注や内示と言った需要/販売の計画をもとに、必要な製品の在庫計画を作り、その在庫を賄うための生産量を計画する業務です。販売→在庫→生産の順番、つまり川上から川下にかけて立てていきます。(生販在計画の前に需要予測、事業計画が存在しますが、生産マネジメントの話では割愛)
②基準生産計画
生販在計画の生産量の計画を受けて、工場での生産計画数を立案するのが基準生産計画です。生販在計画は、月や週の粒度での計画であり、デイリーの「日単位」での計画に落とし込むのが基準生産計画です。日単位にすることで、その日の生産のイメージを具体化します。
③能力計画
基準生産計画を達成するために、生産能力を計画するのが能力計画です。能力計画には、設備の操業能力、人員能力があります。操業計画では、工場の操業を計画します。実際に生産に使える時間から、非稼働や停止、段取り替え、メンテの時間を差し引いて、実稼働ベースの操業時間を計画。人員能力では、操業計画に応じた必要な人数、稼働時間、シフトなどの人に関わる部分を計画します。
④資材所要量展開
基準生産計画をもとに、必要な部品や原材料などの構成部品の計画数を展開します。例えばペン1本当たりペン先1個、ボールチップ1個、グリップ1個などといった具合に展開していきます。部品の展開はBOMという構成品目の部品表を元に算出します。
⑤調達計画
資材所要量計算のうち、発注の対象期間を超えた先の期間で購入する必要があるものを調達計画で設計します。今すぐ購入しないが、先々購入するものを計画しておく、というニュアンスです。資材在庫の変動や資金繰り、サプライヤーとの調整に用います。
これら各種計画に対して実績が収集され、計画に対する実績対比と今後の計画の見通しが立てられます。生産量が落ちた/設備稼働が上がったのはなぜか、今後も続くのか、続くとしたらどういう対策をとるべきか。計画を立案する場合、実績の収集と比較、差異を埋める対策や改めての計画作成といったプロセスが必須になります。
最後に、生産活動の結果を金額換算する原価計算を行います。原価計算によってモノがお金に換えられて、計画通りの原価でモノづくりができているか、工場の利益は達成できているのか、を確認します。計画との差異をみて、コストダウンをするのか、増産をするのか、追加設備投資をするのかといった原価に関わる調整や投資の計画を行います。生産マネジメントの中核である「計画」の重要性を踏まえて、製造業の生産に関わる計画を取り上げてみました。計画は意思であり、思想が現れます。多品種で需要が変動しやすい世の中であるからこそ、計画という意思を描き、変化に即応するのが現代の生産管理の真骨頂であると思います。大掛かりなシステムを導入していなかったり複雑な生産工程ではない製造業でも、計画の重要性は変わりません。
生産マネジメントに着手する際、まずは計画を立ててみましょう。