生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024
今回は、令和6年6月に経済産業省から出された「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024」を扱っていきたいと思います。
https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240628006/20240628006-b.pdf
現在注目を集める生成AI。日本において生成AIの利活用の現状はどうか?今後はどうなるのか?といったところを本レポートを元に見ていきたいと思います。本資料は、全44Pのうち27P以降は人材をテーマとしております。今回は前半の「生成AIの利活用の現状・課題・今後」1-26Pに焦点を当て、かつ興味深い点に絞ります。
■企業における生成AIの現状についての国別比較 7P
知的労働者の生成AIの業務利用割合は、世界平均75%に対し、日本は32%(調査対象国で最下位)となっています。また、競争力を保つにはAIが必要と考えている経営者の割合は、世界平均79%に対して日本は67%(調査対象国で最下位)となっています。他の項目に関しても軒並み日本が低い状況となっております。これは生成AI自体の理解がまだ進んでおらず、活用のイメージが湧いていなかったり、単純に現状維持でもやれているのでよくわからないものを導入してまで変える必要はない、という意識があるのかもしれません。また、生成AIは間違った答えを出す、ハルシネーション(幻覚)で非現実的な答えを出す、といった言説が広まってしまったこともあり、負のイメージがついてしまったいるのかもしれません。
■生成AIへの理解不足と向き合い方 15P
生成AIの日常業務への活用の計画や構想でつまずく、生成AIの導入自体が目的化してしまう、誤った・不正確な情報を出力してしまうリスクを多大に警戒するなどが活用が進んでいない現状と読み取れます。それらを解決する示唆として、間違ってもよい仕事に適用することを考える、問いを深めるたに利用するといったことが挙げられます。
■データの整備 21P
生成AIでは企業データの90%を占める非構造化データが技術的に利活用できるようになると言われるも、IT(器)ばかりに視線が集まり、データの中身の品質や価値を高めることに着目してこなかったことがあります。これは少し前に流行したビッグデータ活用やデータサイエンティストと同様のテーマですが、手法に注目が集まり、源泉(=データ)を整備することがおろそかになりがちだと思います。データ活用の目的やデータ整備/運用ルールを適切に設計することが肝要です。
■経験機会の喪失と実践的な教育 23P
定型業務から非定型業務まで生成AIに代替されれば、OJT等を通じて行われてきた経験を蓄積する機会が無くなり、組織の人材育成に大きな問題がある、という意見と生成AIを利活用した新しい仕事の進め方が生まれるという考えもあります。人材不足が進む中で早期の戦力を育てるという意味では生成AIは役に立つと思われます。一方で五感を活かした経験や課題発見といった部分は生成AIのサポートを受けながらも新たに設計していく必要があると感じます。ただ、10年来かけて技術を習得してきた人からすれば、生成AIで1年程度で習得するのはけしからん、という世代間の価値観の相違もありそうです。