ブログ - 企業変革 データ分析 業績改善 株式会社霧海風

Blogブログ
2026-3-21 戦略 戦略の思考

構造思考 ― 財務業績に繋げる考え方 ―

私たちは日々、目の前で起きている出来事に反応しながら意思決定を行っています。しかし、出来事そのものに直接手を打ち続けても、本質的な改善には至らないことが多いのが実態です。頭痛が生じた時に鎮痛剤を飲むのは、典型的な目の前の出来事への反応です。なぜなら、出来事はあくまで表層であり、その背後には必ず構造が存在しているためです。重要なのは、出来事を起点に対策を打つことではなく、構造から出発して、出来事が現れるという順序で捉えることです。すなわち、単発の出来事ではなく、構造→出来事という立体的な見方に立つことが求められます。さらに、因果関係を単線的な原因と結果としてではなく、相互に影響し合う循環構造として理解する必要があります。この理解こそが、短期的な対症療法ではなく、持続的に成果を生む打ち手へと繋がります。ビジネスにおいては構造を理解し、そこに対して適切な介入を行うことで、財務業績へのインパクトが現れます。本稿では、そのための思考の枠組みを整理します。

①構造とは何か

構造とは、結果を生み続けている関係性のパターンです。単なる要素の集合ではなく、どのように繋がっているか/どのような順番で起こっているかに本質があります。例えば、売上が伸びないという現象があった場合、それは営業活動の問題に見えるかもしれません。しかし実際には、競合との関係、商品設計、価格戦略、組織の意思決定、評価制度など、複数の要素が相互に影響し合った結果として現れています。また評価制度がプロセスを重視することになっており、それを社員が重視しすぎたが故に売上の低迷に繋がった、などの順番の要素も考えられます。したがって、構造を捉える際には繋がりと順番が起こる影響範囲の広さが極めて重要になります。業務構造に閉じるのか、組織構造まで含めるのか、あるいは事業全体の構造として捉えるのか。この切り取り方によって、因果関係とその順番に応じた打ち手も大きく変わります。構造とは、どこまでを一つのシステムとして見るかという前提の上に成立するものです。

②構造の特徴

構造を理解するためには、いくつかの特徴を押さえる必要があります。

(1)因果ループ
要素同士は一方向に影響するだけではなく、相互に作用し合い、循環を形成します。売上が増えることで投資余力が生まれ、投資を追加で行ってそれがさらに売上増に繋がる強化ループもあれば、在庫増加がキャッシュを圧迫し、少ないキャッシュで追加仕入が難しくなるといった抑制ループも存在します。因果が循環しないケースもありますが、その場合でも繋がりや波及が発生します。


(2)時間差
打ち手の効果は即座に現れるとは限りません。むしろ、時間差を伴って現れることの方が一般的です。AとBは同時に起こることを期待しても、実際にはAの後にBが起こっていたりします。広告を打つと即座に興味関心が生まれると判断しがちですが、広告を見た人の中で咀嚼や思い出したりするといった時間差があって興味関心が起こったりします。この時間差を無視すると、打ち手は意味がないといった誤った評価やすぐに効果が出ないからといって過剰な取組みを招く可能性があります。


(3)非線形性
一定の変化が常に一定の結果を生むわけではありません。閾値を超えた瞬間に急激な変化が起こることもあれば、徐々に影響が出るものもあります。一方で、前半は全く効果が出ず、最後に一気に効果が表出するケースもあります。英語や会計の勉強は、始めの頃は単語の意味がわからず前に進んでいる感じが全くしませんが、後半でそれらの点が線に繋がると一気に成長したりします。

これらの特徴を踏まえることで、構造は一度決まったら動かない静的な図ではなく、途中で変化したり循環したりする動的なシステムとして理解できるようになります。

③構造思考とは何か

構造思考とは、扇の要を特定する技術です。いわば、複雑な現実をモデルで単純化しながら、その背後にある因果の連鎖を順番と共に捉え、そのうち圧倒的な効果を生み出しそうな1点に集中する思考です。目に見える現象に反応するのではなく、その現象を生み出している仕組みに目を向けます。このとき重要なのは、すべてを網羅的に厳密に解明しようとしないことです。現実は複雑であり、完全なモデル化は不可能だからです。そのためロジカルシンキングでよく言われるMECE(=漏れなくダブりなく)を重視しすぎないようにします。全体を完全に要約しようとするのではなく、一部を抜粋するイメージです。こうしたいくつかの観点で対処する部分を絞り込んだり簡素化することが求められます。

構造をモデル化した後に、1点=解くべき問いに絞り込む(=抜粋)ために必要な観点は、以下になります。
1)全体に与える影響が大きいか(決定的か、圧倒的か)
扇の要となるその1点を除外してしまうと、全てが崩れる/壊れる核心となる点を探り当てます。建物を支える重心と言えるかもしれません。

2)自ら動かすことができるか(管理可能か)
固定的な要素や管理ができないもの(=天候や市場の動き、他人の心理など)を動かそうとしても難しいです。働きかけて影響を与えられる点に取組みます。

3)動かした際の効果が大きいか(インパクトがあるか)
取組んだとしても、インパクトが小さければ、投資対効果が得られません。経済合理性という観点から絞り込みを行います。ただ構造をどこまでで捉えるかによって変化します。

④構造を歪める要因

構造は理論通りに振る舞うとは限りません。そこにはいくつかの歪みを生む要因が存在します。一つは「偶然性」です。小さな変化が連鎖し、大きな結果を生むことがある一方で、同じ施策でも結果が異なることもあります。一見物語として筋が通っていても偶然のことがあります。こうした不確実性は、実務において避けることができません。また、要素が多すぎるがゆえに、因果関係を完全に特定することはできません。そのため、一定の不確実性を前提に意思決定を行う必要があります。実務では、6割程度の確からしさで前に進む判断が現実的です。さらに、測定そのものが構造に影響を与える点にも注意が必要です。指標を設定し、それを評価に用いることで、人や組織の行動は変化します。その結果、本来の目的とは異なる最適化が進む可能性があります。チャットツール上のスタンプの量を計測し、スタンプの量が多いチャンネルほど交流が多く業績が良い傾向がありました。ただそれを評価に用いることで意味のないスタンプが横行することになってしまった、などが挙げられます。また、時間視野の短さも大きな歪みを生みます。短期的な成果を優先するあまり、構造そのものを悪化させる意思決定がなされるケースは少なくありません。押し込み販売が常態化することで、短期的に売上が上がるも、その後のフォローが雑で顧客満足度やリピート率が下がってしまう、などが挙げられます。構造思考は万能ではありませんが、こうした歪みを前提として扱うことで、より現実に即した意思決定が可能になります。

⑤実務への応用

◇ある中堅商社のKPI断捨離

データ活用を推し進めて業績を上げることを目論んでいた活動です。過去から連綿と続けてきたのですが、どうしてもデータ基盤やシステム上での可視化、KPIを増やすことばかりに話が言ってしまい、活動が停滞していました。そこで、まず今起こっている業績低迷が、どういう構造で引き起こされたのかを整理する構造マップを作りました。市場の動向、データ分析の状況といった環境的な要因から、各事業部での管理強化によるKPIの過剰発生、それによる帳票作成や閲覧負荷の増大、そして業績低迷という最終結果に至るマップです。この構造を顧客と認識合わせをした結果、こういうメカニズムで起こっていることはその通りだと思う、と同意を得られました。

そして、この構造の中で、どの点が扇の要かを指し示しました。詳細は触れられませんが、マインドセットに起因する部分でした。その扇の要を解消する動きに絞って活動することに合意しました。活動の人員や時間が限られる中でゼロベースで進めるのではなく、既存のKPIをベースに一定の枠組みでKPIを減らすことで対処しました。今回は、現場からの抵抗は少なく、どちらかというと惰性でKPIが増えてしまっていた状況があります。最終的にKPIの断捨離が3割程度進むことで、業績改善の兆しを得られるところまで到達することができました。KPIの断捨離が進むと、要件が整理されてデータ構造が明確になるとともに、設計する範囲が狭まることでデータ活用の速度も上がりました。

今回は構造思考の回でしたが、いかがでしたでしょうか。弊社霧海風の根底の考え方である構造思考。コンサルティング支援をするときには、専門分野の知識が必要だと思われがちです。もちろん必要ではあるのですが、物事が複雑に入り組んでいるとき、なにか上手く進まないとき、堂々巡りをしていると感じるとき、は専門知識の多寡よりも、出来事の構造を捉える方が効果的です。構造を把握して打ち手が明確になれば、その打ち手は驚くほど簡潔なもので済むはずです。生成AIで捉えようとしても、出来事を細大漏らさずプロンプトで説明することは難しいため、まだまだ人が携わるべき領域です。一度出来事を立体的に観るために、出来事の手前の連鎖を3つ辿って書き出してみてください。

同じカテゴリーの記事