業務を効率化しても要する人手は変わらない??

今回は、業務変革を行って業務量の効率化を達成しても、人員は変わらないこともある、ということを取り上げてみたいと思います。通常、業務効率化の目的は、以下の2つのどちらか/両方を念頭に置いていることがあると思います。

・同じ業務量を少ない人数でこなせるようにする
・業務量が増えても同じ人数でこなせるようにする

しかし、業務量の効率化を果たしたとしても、人数が変わらないことがあるのです。これにはれっきとした理由があります。まず、誰の業務時間を効率化するか、という論点があります。誰、というのは属する組織の方の属性の話です。正社員、パート/派遣社員、もしくは外部委託と大きく3つ分けられます。

このうち、正社員の方の業務時間は基本固定的で、定時内であれば業務量が増えても減っても人数はかわりません。但し、定時以外の時間、朝や夜、休祝日の残業時間については、業務が多いとどんどん増えていきます。逆に業務が少ないと減っていきます。一方で、パート/派遣社員の方は、基本的に時間と業務が定められています。業務量が増えれば人数は増えるし、業務量が減れば人数は減ります。外部に委託する場合の外部委託業者についても同様です。組織の外か中かの違いはありますが。そうすると、正社員の方の業務時間は(残業を除くと)固定的であり、パート/派遣社員の方の業務時間は変動的であることになります。

ここで陥りがちなのが、業務時間を効率化したのはよいものの、正社員の方は固定的な業務時間なので、10%ほど業務が減っても人数は減らない、ということです。10人いて1人分の仕事が浮いたなら9人になるのでは?と思われた方もいるでしょう。その場合、1人を減らす、ということにならず、複数人~10人全員の業務が薄く広く軽減することになりがちなのです。ですので1人も減らないのです。

なぜこれが起こるのかというと、別の論点があります。日本企業で正社員を雇う場合、職務を限定して雇うことはまだ通常ではありません。メンバーシップ型採用といって人に業務を貼り付けるタイプの人事慣行です。そのため業務が減ったから人を減らそう、ということにならず、人が在籍している分、業務を薄く広く軽減しましょう、といった発想になるのです。海外のジョブ型雇用、いわゆる業務に人をあてこむタイプだとこれは起こりません。業務が無くなれば人も同じく不要ということになります。

もし業務と人員を連動した形で業務効率化を行いたいならば、完全なジョブ型雇用に移行するか、現在の人事慣行で業務分掌を厳格に作って誰がどの業務を担当するかを可視化した上でないと難しいと感じます。そうであっても人事慣行的に人事権で人員の異動という手段があるので果たして効率化が確実か、と言われると難しい面もあります。そのため、業務効率化の現実的な着地としては、まずは変動的である正社員の残業代とパート/派遣社員の契約を効率化する目線になると思います。

以上、業務を効率化しても人手は変わらない??のメカニズムを取り上げてみました。他にも、業務を行う際には、期日までに余裕があってもその時間に間に合うように業務を行ってしまう(間延びさせてやってしまう)、という人の特性もありますが、それはまた次回。