今回は企業活動における投資の重要性を扱っていきます。投資というと、真っ先に思い浮かべるのは、株とか不動産への投資。自らの子供への教育費を負担するというのも投資と捉えられると思います。競馬やカジノなどのギャンブルも広い意味では投資に入るかもしれません。基本的には、何かにお金を費やして、それ以上の効果をもたらすことを期待する行為、といった感覚になると思います。しかしふと立ち止まって考えると、はて投資をきちんと考えると厳密にはどうなのか?となると思うのでまず投資の定義を確認してみましょう。
将来的に利益や成果を得ることを目的として、資金・時間・労力・資源などのリソースを投入する行為。
株や不動産だけだと「お金」を投資するイメージでしたが、この定義を見ると時間や労力を投下するのも投資です。そういわれると確かに日常会話で労力をつぎこんでガーデニングや家具を組み立てたり、イベントを開催したり資格試験の勉強をしたことを投資、と呼んでも違和感が無いです。ここまでは一般的な投資の定義でしたが、このブログは基本的に企業活動や企業経営を扱いますので、次は企業における投資の定義を見ていきましょう。
相当期間に渡って資金を何らかの資産に拘束すること
具体的に企業活動における投資とは、工場などの設備投資、商品購入などの在庫投資、育成などの教育投資、技術力の獲得の研究開発投資、販促のための広告投資、などが挙げられます。いずれも一定期間に渡って手持ちの資金を資産もしくは資産に準ずるものに拘束しています。一般的な投資の定義よりも狭義の意味合いになりました。(もちろんこれは投資の定義であって目的ではありません。目的は、一般的な定義と類似しており、「投下した資金を上回る利益を上げること」です。)この定義からわかることは、企業活動における投資は基本的に自らのお金か借り入れたお金を元手に資産(準ずるもの含む)を購入し、その資産からお金を生み出す行為だとわかります。
ここから話は少し変わり、通常の企業活動を見てみましょう。企業は製品やサービスを売って稼ぎます。同じ製品を提供していても、人が上手く動いている企業や設備の動き方にムダの無い企業の業績はそうでない企業よりも良好です。また、材料を低価格で仕入れたり、効率的な教育方法を採用したり、工夫を凝らしている企業は業績に差がでます。これを「改善努力」と名付けます。一方、工場などの設備にお金を使って投資をして稼ぐ、という冒頭に上げた投資を用いる方法もあります。改善努力と異なり、使うお金は桁が違って大きな額となります。新しく工場を建てる、となると改善努力とは異なり、根本的なビジネスの規模が変わったり、180度仕事のやり方が変わったりします。こうした環境や構造に影響を与えるものを「構造力」と名付けます。
「改善努力」と「構造力」。
この2つが企業を存続・成長させるために存在しますがどちらが重要なのでしょうか。取組みとして長い時間をかけるのは改善努力の方だと思います。もっと効率的に営業できないか、安くモノを変えないか、人の配置をどうしようか、エクセルに数値を入力するのに計算式を使えないか、などなど。ほぼ全ての人が関わる行為ですし、費やす時間も長いです。反対に、構造力は環境や構造そのものに働きかけます。関与/検討する人は企業の中では少ないかもしれませんが、工場を新たに設立したり、TVCM広告につぎ込んだりするのは根本的な要素となるため、影響の力や範囲はこちらの方が大きいと言えるでしょう。逆に言うと、「構造力」が整っていない状態やビジネスの環境では、改善努力にいくら取り組んでも業績には寄与しづらいということです。
構造力=お金を何らかの資産に投下してその資産から収益を上げる、の方が中長期的な観点や大局的な収益を決める決定的要素であることがわかりました。投資は重要である、と。そうであるならば、次の論点はいかに良い投資と悪い投資を見極めるかだと思います。改善努力はお金はそこまでかからないため、その日の思い付きで行うことができますが、構造力はお金が莫大にかかります。そのため、投下したお金から生み出す利益がゼロだったとか、投資しても思ったように稼げないといった事態は避けねばなりません。この意味では、改善努力の方が方向転換はし易いため、投資を行うということは判断が難しい行為です。
弊社が支援してきた中で言えば、改善努力は滅法取組むのですが、お金を節約しすぎるがあまり構造力の向上、つまり投資を行わなかったりします。この場合、大きな失敗(=お金の流出)はしないのですが、1%の改善といった既存の延長線上の向上しか狙えず、中長期的には競争力の低下は免れません。勿論ビジネスの形態や企業の状況によって投資の度合いは変わりますが、定期的に投資を行って構造力を増していく必要性があると考えます。とはいえ、改善努力が不要かと言われるとそうではありません。投資をした上で、その投資を最大限効果を発揮するためには改善努力が必要だからです。例えばせっかく新しい工場を稼働しても、それを運営する努力が杜撰であれば、当初得ようと目論んでいた投資の成果が得られなくなります。
さて、「投資」と一般的に聞くとリスクの高い怖いこと、という認識があるかもしれませんが、企業活動においては重要な要素であることがわかりました。きちんとリスクを見極めた上で、投資判断をしていけば大きな失敗になることはないと思います。次回は良い投資悪い投資を投資する方法について扱っていきたいと思います。