損益管理の要素

企業活動を進めていく上で、財務数値を用いてPDCAサイクルを行うことは必須の活動です。こうした活動を損益管理と呼びますが、今回はこの損益管理はどういう項目で構成されるべきなのか、つまりどういう観点で管理されるべきか、という基本的なところを押さえていきたいと思います。

損益管理を「財務諸表などの結果数値をベースにした、利益向上を実現するための設計とプロセス」と定義します。

まず企業活動の結果として出される成績表をベースにすることから出発します。社内の実務に近い数値(伝票処理件数、採用人数など)は企業の成績表からは遠い位置にあるため、損益管理からは含みません。成績表を元に企業全体の課題や改善策を立案するからです。また、貸借対照表やキャッシュフロー計算書は定義の「利益」とあるように除外します。これら2つも非常に重要なのですが、今回は馴染みやすい利益に限定します。後半に記述がある「設計とプロセス」は、まさにどういう観点や社内プロセスで運用していくのか、に言及するものです。それでは損益管理に必要な要素を列挙していきます。

言わずもがなですが、数値が絶対的に必要な要素です。「利益向上」と定義する以上、売上、費用、利益が対象となります。具体的には売上、売上原価、売上総利益、販管費、営業利益、営業外損益、経常利益・・・etc これら数値項目の実数と率の両方を捉えます。実際の数字の大きさと比率の効率さの両方を同時に捉えます。

企業全体の数値を、今後は一定の括り方で分類します。分類して細分化することで個々の事情に応じた課題や改善策を見つけ易くします。具体的には、事業別、製品別、顧客別、地域別などがあります。売上はこの分類毎に容易に集計できますが、費用を分類別に配賦する場合に難易度が上がりますので注意を要します。また、分類することが目的ではなく、分類することで「傾向の違い」を出すことが重要です。

時間は、過去と現在と未来を指します。時間の推移毎に捉えることで過去の傾向から未来をどう対策するか/計画するか/予測するかを容易にします。「現在」は、リアルタイムでどう進捗しているかを把握し、現在の瞬間のかじ取りを行うことに用います。

数値を分類別に分けたところで、その責任範囲の担当者を決めます。分類だけしてもその範囲の責任を負う担当者がいなければ計画数値の達成が他人任せになってしまったり、誰も責任を負わなくなってしまいます。当事者意識を高めるために設定します。

①~④まで揃ったら、運用に入ります。まずは現状把握。過去の結果数値から現在地を把握します。次にありたい姿とのギャップから課題を抽出します。その課題を潰していく実行計画を策定します。最後に、実行して検証をしていきます(PDCAサイクル)

①-⑤の要素を円滑にするために、集計のためのシステムを活用します。集計結果の見せ方としてエクセルやBIツールを用います。①を②+③で数値を抽出する際にシステムを活用するわけですが、3つの備えるべき性質があります。

数値がまず正確に抽出できなければ、それを元に課題や改善策を立案しても全て間違った結果に繋がってしまいます。数値が正確に抽出できることは重大な性質です。ただシステム上の算出が合っていても、現場のインプット入力が間違っているケースもあります。

2)速報性

数値が正確であっても、1年後に判明していたのであればアクションを起こすのに遅すぎます。理想は即時に判明することですが、現場の入力の手間やシステムの処理時間の関係で判明するのが遅れることがあります。アクションして結果がわかるスパンにおいてデータが速報性を有していることが望ましいです。

3)一元性

数値が各拠点や各システムにバラバラに散在していて、集約するのに人の手間を要したり、集約する際の項目が拠点毎に異なって集約できない、ということが起こると全体で判断ができなくなります。一元的に数値が集約されていることが望ましい性質です。

今回は、通常のビジネス活動で行うPDCAサイクル、という状況を前提にして取り上げてみました。どれも基本的なことではありますが、利益向上には欠かせないものです。