描くだけで終わるか、動かすところを支援するか、その具体的な違い---

今回は、経営コンサルティングでよく話題に上がる、戦略立案だけ行う、実行を伴走支援する、の具体的な違いにフォーカスをあてたいと思います。戦略立案を支援するだけだとダメで、実行を伴走支援する、だと良い、と巷ではよく言われますがそれは本当なのか。違いをわかった上で述べているのか、と疑問を感じ記事のテーマとしました。

まずは、企業活動の工程を分解してみます。企業はまず目的を持っています。その目的を達成するために営利活動をするのですが、まずその目的を達成するための戦略を立てます。どこに注力して何の価値を誰に提供するのか。その戦略を計画に落とし込みます。損益計算書などの数値計画や、数値を達成するためのいついつまでに誰がどういう行動を行うのかの行動計画。その行動に従って実行をしていきます。実行をしていく中で結果が出てきます。上手くいったものもあれば上手くいかないものもあると思います。上手くいかなかったら、計画の修正や行動の修正が入ります。更には戦略からの修正も入るかもしれません。これら一連の流れをぐるぐると回していくのが企業活動です。

ここで、経営コンサルティング会社が支援に入るとします。戦略立案を提供するA社は、上流の目的や戦略の立案を支援します。XX市場に参入、XX企業を買収、XXと業務提携、といった世界を描きます。この領域は構想設計力が試されるため、正解がなく、手探りで実施していく必要があります。抽象的な話が多くなるため、ある意味難しい領域の支援となります。真っ白なキャンバスから絵を描き上げていくイメージです。細かい粒度の項目や実務をイメージして正解かどうか/実現可能性はあるかを突き詰めすぎると構想が纏まりません。

実行の伴走支援を提供する経営コンサルティング会社B社は、実務の実行の支援や代行、進捗の方向性の修正などを行います。XX市場に参入するために、知見者にヒアリングする、必要な設備投資を行う、スキルに見合った人員を採用する、などを粛々と行っていきます。予算が倍に膨れ上がったなどの予想してたことと違うことが発生したり、免許が実は必要だったなどのトラブルの発生、の場合に方向性を適宜修正していきます。この領域は戦術/戦闘力が試されるため、量をこなす、誰かがやらないといけない泥臭いことを行う、関係者の利害を調整して上手く収めるなどの必要があります。申請や手続き、経理処理などは正解が求められます。ここで構想といったフワッとした話をすると、まずは手を動かせ、や正解を知っている人に早めに確認しろ、といった話になります。

尚、「支援」と「代行」は意味合いが異なります。「支援」は、できるだけ実務の領域に近づいて資料の叩き台作成、意思決定の材料集め、ベンダーの調査などを行いますが、最終的な実施は顧客が行うものです。「代行」は、文字通り1から10まで顧客の代わりに業務を行うことです。最終的な結果の確認や承認は顧客が行うケースも多いです。

こう記述してみると、描く/動かす、それぞれだけではうまくいかないことがわかります。適切に構想設計して、その世界に従って粛々と実行していく、車の両輪であることがわかります。片方が片方を批判するのはお門違いです。ただ、実行側が構想側を批判することが多いのは、大きく2つの理由があります。

①構想→実行の順番だからです。実行が後工程であるがゆえに、上流である構想がイケてない、実行側をわかった上で描いているのか?となりがちなのです。実行を無視して構想しているケースもあるため、構想だけ行うA社が批判されやすいというのは構造的に仕方がないことかな、と。あとは他責思考だと、実行側である自分達よりも、どうしても上流の戦略の工程を攻撃してしまいがち、というのもあります。

②もう一つの理由は、構想だけしても成果が実るのは実行後です。実行を支援すると結果として成果が手に入るため、顧客から感謝されやすいということです。戦略→実行→成果、のため成果の手前の実行が近いため、直接的な原因が実行にあると感じられるからです。あとは実行の方が手触り感があって目に見え易いので、支援してくれているイメージが湧きやすいことです。戦略はどうしても机上で構想するため、PCや紙の前で座っていて何もしていない印象になりがちです。

戦略立案を提供する会社A社、実行の伴走支援をする会社B社、どちらもそれぞれに価値があり重要な位置づけであると考えます。勿論一気通貫で提供できる会社を作っては?という考えもあるのですが、専門領域を特化させるために絞っているケースもあります。お互いがお互いを尊敬し、共に顧客支援に邁進する姿が望ましいと思います。