強みの発見(競争優位)

古今東西、他社ではできない商売をして出し抜け、と言われてきました。しかし改まって他社を出し抜ける要素や差異化できることはなにか?と問われるとすぐに明言できないことが多いと思います。今回は他社との差異化=強みを発見することにフォーカスしていきたいと思います。

まず他社との差異化を実現する「強み」とはなにか。当たり前の日本語すぎて深く考えたことが無いかもしれません。当たり前すぎるが故にきちんと捉えていきましょう。

色々な強みの定義を俯瞰します。
・他社よりも大きな成果が得られてしまう特質
・一貫してかつ高い完成度である課題を遂行できる活動・能力
・顧客から選ばれる/競合より利益を出せる要素

この3つを複合したニュアンスと定義します。総合的に見ると、強みとは他社と比較したときの相対的なものである、と言えます。どれだけ自社が得意なことでも、他社も同じように得意であれば、強みとはなり得ない、ということです。そうすると、自社の得意なこと×他社の平凡/苦手なこと、が重複する領域が強み、と言えます。自社のことだけでなく他社のことも熟知していないと強みは発見できない、ということです。更に受け加えると、その2つの重複に市場=顧客が求めていること、も重なっていると強みの完成形になります。いわゆる3C分析に帰着します。

次に、強みが何によって成り立っているか/強化されるのかを3つの要素に分解します。強みがまだまだ曖昧なので分解していきます。
①蓄積の独自性
自社が時間をかけて長年蓄積したものこそ、企業独自のものになるので強みとなりやすい
②因果の曖昧さ
強みを成り立たせるものが複雑、最も貢献しているものが分かりにくいと強みとなりやすい
③社会的な複雑さ
人同士の関係や企業文化、顧客基盤、評判などの複雑な社会性を有している場合、強みとなりやすい

この3つは言われてみるとその通りだなと感じます。例えば他社が自社の強みを消そう、追い付こうとなったとします。しかし自社が、長年の開発知見を蓄積しており、業務の遂行の価値の因果関係が複雑で、顧客の評判が良い、となると他社が追い付くのが難しくなります。

さて、ではどんな領域が強みとなるのか、いくつかを挙げていきます。
・商品/サービス・・・機能や品質が優れている、など
・価格・・・同じ品質で価格が安い、など
・販売力・・・営業人員が充実している、接客術が優れている、要望へ迅速に対応する、など
・製造力・・・独自の設備で高品質なものを製造できる、など
・企画/開発・・・顧客の隠れた困りごとを解決する構想力、魅力あるデザインを生み出せる、など
・人材/組織・・・優れたスキルやビジョンに合致した人材が多く所属している、など
・販路・・・代理店や特別な販売ルートを有している、ニッチな部材を確保できる、など
・ブランド・・・想起されやすい、認知度が高い、価値が高いと思われている、など

他社と比較した上で、どの領域に強みがあるのかを特定していきましょう。

強みの定義、強みの要素、強みの領域を整理しました。ここから自社の強みを発見していくわけですが、非常に難しいものでもあります。日々の業務に忙殺されていると、自社と他社を俯瞰的に見ることが無いからです。一度時間を取って落ち着いて一歩後ろに引いて鳥の目で探してみましょう。

最後に、強みを発見した実際の事例を取り上げます。ある製造業A社です。A社は30年以上に渡りある地域で営業をしてきた老舗です。量販店からの受注を中心に拡大してきました。

この企業での強みは、大きく3点ございます。
■その地域での大量製造を受けきれる製造キャパシティの保持
■需要者からの要望の小回り対応力(製品の仕様変更、新製品の開発、配送頻度/時間の柔軟な対応)
■他社が保持していない品質を高める製造設備の保有

大別すると「顧客対応力」「製造能力」に分けられます。強みの3要素(特に蓄積の独自性と社会的な複雑さ)がそれぞれ成り立っていることがわかります。強みの領域だと製造力や販売力があてはまるでしょうか。

今回は強みを発見する、ということにフォーカス致しました。簡単そうで奥が深い「強み」。自社の競争優位を構築する/持続するためにも一度着目してみてはいかがでしょうか。