平均値を高めるorバラつきを無くす、どちらから改善する?
ビジネスやスポーツ、勉強などおよそどの分野でも出てくる話題を統計の話として挙げます。定量的に結果が出る物に対して、誰もが一度は思ったことがあるテーマだと思います。平均を上げるか、バラつきを無くすか。しかしながらあまりそれを体系的に捉えて考えたことはないと思われます。今回はそれを考えていきましょう。具体例で考えてみます。
A君とB君が営業を任されました。案件を獲得するためにお客様の元を訪れて営業するとします。A君は先輩であるB君を見習うように言われています。(商売の形態や単価は架空で設定しています)
A君の結果 10件の営業で、4件案件獲得。売上は5万円、10万円、15万円、70万円でした。
B君の結果 10件の営業で、4件案件獲得。売上は30万円、40万円、50万円、40万円でした。
上記の内容を整理してみます。
■案件獲得率は同じ
■売上平均はA君25万円、B君40万円
■売上最高額はA君50万円、B君70万円
■売上最低額はA君5万円、B君30万円
■売上のバラつき(分散)はA君8万円、B君30万円
ここで、A君は、B君を見習う際に、2つの選択肢があると考えられます。
①平均値を高める
②バラつきを小さくする
①は平均値の差が15万円あります。これを高めようとする選択肢です。平均値を高めるにはどうするか。A君の発想:売上70万円の案件が1個獲れた実績があるので、今後も獲れないことは無いはず。こうした案件をもっと獲れるように頑張って平均値を上げよう。ただ能力以上に背伸びして獲った、かつたまたま獲れたような案件だな。安定して獲れずに5万円で着地する案件もポツポツ出てきてバラつきは大きくなるかもしれないが、仕方ない。
②はバラつきの差が22万円あります。このバラつきを小さくする選択肢です、バラつきを小さくするにはどうするか。A君の発想:5万円の低単価のときや70万円のホームラン案件があり、バラつきがとても大きい。営業の準備が雑なときや完璧なとき、客に提案が刺さってるときとか刺さってないときがあって不安定。足腰がグラグラな営業なので、まずは基本的な準備を標準的に行うようにしよう。基礎中の基礎に注力するからホームラン案件は獲れずに単価の平均が下がるかもしれないが、仕方ない。
さあ、どちらを問題視して改善するのが優先でしょうか。
ずばり結論からいうと、「②バラつきを小さくする」、です。バラつきが大きい状態というのは、今回のケースでいうと営業の仕事の型が不安定です。たとえ70万円のホームラン案件が今後獲れたとしても、たまたまであって再現性が低くなります。仕事が運次第、というのは危なっかしくてしょうがありません。そのため、まず平均値が下がってもよいので、バラつきを小さくする=基本の基本を漏れずに遂行できるようにすることが優先です。
そうすると、バラつきが小さくなって、安定してきます。たとえその安定に到達して仕事のレベルが低くても、そのレベルの仕事は安心して任せられますし、営業であれば再現性が高く数字の見込みも立てやすくなります。その後に、①平均値を高める、に取組みます。基本の仕事の型が出来ているので、それを少しづつ高めていくのは階段状に上がっていくため難易度が低くなります。逆の取組み方、最高の値を狙う、のはその人の仕事の進め方や組織を崩壊させることに繋がります。70万円の単価の好成績を残していると、ついおいしい案件、ラッキー案件を獲りに行ってしまいがちになります。
さて、いかがだったでしょうか。まずはバラつきを小さくしてレベルが低くても再現性を上げる。その後に平均値を徐々に上げていく。これが王道です。逆にラッキーパンチは継続性がありません。超短期の仕事ならばそれでもよいですが、仕事人生は20,30年続きます。コツコツ足元から取り組んでいくことがバラつきを小さくすることに繋がります。