原価計算で自由度が高く難しいテーマその1 (間接費の配賦)
原価計算の活動を行うにあたり、企業が独自に自分達で設計して決めなければいけないが故に取組みが難しいテーマがあります。原価計算に限らず、正解がないテーマはいずれも難しいものではありますが。
それは、「間接費の配賦」「予定価格の設定」の2つです。
いずれも企業が独自に決めてよい概念なので正解がなく迷いが生じるテーマです。
もちろん財務会計では企業会計原則や原価計算基準の枠組みに従う必要があります。
今回は間接費の配賦について考えてみます。(個別・総合原価などの専門用語はできるだけ省きます。)
例えばボールペンを作る製造業を想定します。経理の人が、損益計算書でざっくり全体で把握するのではなくて、費用を算出して製品別で儲かっているかどうかを見たいな、と思い立ったとします。
そこで、ボールペン1本を手に取り眺めてどんな費用がかかっているかに思いを馳せてみます。
本体部分のプラスチック、インク(顔料、染料)、先端部分のチップ(ボール/スプリング)・・・。
これで終わりでしょうか?もしかすると目の前に見えている費用以外にもあるのでしょうか?
もう少し考えを深めてみると、プラスチックを加工する成型機も購入しているからそれの費用もかかります。プラスチックの型を決める金型も必要、とわかります。そういえばそもそも成型機を動かして作業する従業員の方の給料もある、とわかります。生産量を管理する生産管理の部門の方もいるな、というのもわかってきます。(他の費用も色々ありますが単純化のため今回は割愛)
ここまでくるとなんとなくわかりますが、ある1本のボールペンの費用を算出するのに、材料費で直接的に掛かっているものはすぐ算出できるが、設備や労務費など1本の単位で直接計測できないもの(=間接的に要する費用)が結構多いな、ということです。製品別に費用を出そうとすると、1本単位に分解して費用を載せる必要があるな、となります。
ここで出てくるのが、それら間接費をいかに納得感が高い形で1本単位に配賦するのか、という問いです。
設備の費用を配賦する場合、製造量で配賦するのはどうか?100万円の機械で100,000本作ったら1本あたりの設備費用は10円になります。いやいや、ボールペンによっては成型機の加工で複雑な処理をしているからそれと同じなのはダメだろう、という話もでてきます。
この議論を続けると、正解がないことに気づくばかりか、配賦基準を細かくすれば実態に近くなるが計算は複雑になるというトレードオフにも気づきます。
ではどんな基準が妥当性が高いのか?というのはまた次の機会にお話しします。
今回は、原価計算で自由度が高く難しいテーマとして間接費の配賦をまずは紹介いたしました。