分析:グラフを自分でゼロから作って解釈する

今回は、分析の技術としてExcelで作るグラフ(棒グラフや折れ線グラフのこと)を取り扱ってみたいと思います。グラフ?そんなもの教えてもらわなくても作れるよ、と感じた方も多いと思います。しかし意外に自分でグラフを能動的に作って解釈する機会というのは無く、改めてグラフの力強さを紹介したいと思います。

昨今では、データをデジタルで取得できる環境が整ってきています。webサイト内でユーザーがどのように回遊したのか、テニスのサービスはコートのどこに着弾したのか、など。以前よりデータや数字が身の回りに増えてきたなと感じることが多いと思います。データや数字が取れるということは、グラフなどの可視化したものがITツールで勝手にたくさん出来上がる傾向にあるということです。そうすると、自分がゼロからExcelでグラフを作り上げて解釈することが少なくなり、分析力が高まらなくなります。最初の第1歩は自らグラフを作ることをオススメします。ここからは、グラフを作る前後の考え方を述べていきます。

①数字の海でExcelを埋め尽くした分析を止める
よくあるのが、管理の経理や経営企画が、分析した数字の海をExcel一杯に表現したもの。作った本人である経理や経営企画の担当の方は理解できるのですが、使う側に立ってみると数字ばかりで何がどういう状況かわかりづらいです。やはり人間は数字の羅列を瞬時に理解できるような感覚を持っていません。そこで、騙されたと思って1個でもいいので物事の大小を比較したり、推移がわかるグラフを作ってみましょう。そうするとあら不思議、数字を眺めるだけでは見えてこなかった気づきが出てきたりします。数字で見るより想定以上に来店客が増えてるな、A店よりB店の方が利益率はいいけど額は少ないな、といった気づきが得られます。

②ながーーーい期間でグラフを作ってみる
企業の報告/分析資料を見ていると、結構ぶつ切りの短期で分析しているケースが多いです。例えば2025年1月単月の各営業店の成績。目標と去年の数字も横に並んでいます。これも有用ではあるのですが、点での把握になっており、線や面の把握ができません。そこで、月ベースであれば過去24か月分を並べてみましょう。意外にこうした並べ方をしないことが多いです。しかし24か月分を並べてみると、単月でぶつ切りで比較していただけでは見えてこない傾向や特徴がわかります。例えば、最近接客の件数は伸びてると思ったら12か月分を並べると下降傾向だな、とか。最近の数字だけ見るとあまり変わらないと思っていただけど、売上と利益が少しづつ少しづつ減ってきているなといった気づきが得られます。

③データを異なった切り口でスライスしてみる
過去行ってきた切り口や教科書に書かれている切り口でデータを分析することが多いと思います。例えば営業店舗別、顧客別、年月別、担当者別etc。この切り口で成果が生み出されているのならば問題はございません。更なる突破口を見出したいときや事業が傾いている状況を打破したい場合の1つの施策として、異なった切り口でデータを見てみるのがよいと思います。例えば顧客別でみているものを顧客の属性群で見てみる。属性群を地域で分けていたものを取引額や利益で見てみる。本社からの距離で見てみる。平均ではなくバラつきで見てみる。この時の切り口のポイントは、違いが出るかどうか、そして成果に繋がるか、です。やたらめったら切り口を増やしても成果に繋がらなかったり、計測の手間が増して焦点が定まらなくなるのでNGです。

④データが生み出された現場を想像してみる
②や③を行うことで新たな視点や気づきが生まれるやもしれません。さらに一歩進んで、現場オペレーションに思いを馳せてみましょう。この拠点の単位当たり利益は他拠点と比べて少ない。なぜだろうか。そういえば業務に比べて人員が逼迫していると言っていたな。そうすると日常業務に忙殺されているから顧客への提案が難しくなっているのではないか。製造ラインの不良品率が上がっていて担当者への指導を進めているがまだ改善しない。なぜだろうか。ひょっとすると設備の経年劣化で人以外の部分で不良率が上がっているのでは。こうした仮説をもって現場の担当者に聞きこんで検証していく流れです。

以上の①から④は物凄い分析技術を用いているわけではありません。比較的シンプルなことに言及しています。BIツールなどのデータを勝手にグラフに整形してくれるものを長く使っていると、データをいじくって解釈したり疑問を持ったりする機会が減ります。是非一度立ち止まってゼロからグラフを自分の手で作ってみてください。