分析の3基本要素

分析、というと最近ではありふれた言葉に聞こえます。課題分析、財務分析、データ分析、市場分析。しかし分析の基本を的確に押さえて行っていることが少ないように思います。単なる流行言葉として用いたり、何となくわかったような結果で終わってしまうケースが散見されます。これは、分析という言葉をよくわかっていないまま使っているからではないでしょうか。

そこでまずは分析の定義と目的を整理した上で、分析の3基本要素をご紹介していきます。

■定義:事象の本質/構造を適切に理解するための作業
■目的:適切な認識に基づいて適切な意思決定をする

分析の定義からすると、企業の売上のデータを月毎に並べてグラフにする、工場内にセンサーを取り付けて設備の稼働データを取得する、だけでは分析とは言えません。単なるデータの可視化、データの収集、です。売上の例だとなんの要素が積み重なってこの売上ができたのか、月毎に見ていくと上昇/減少の傾向が見られる。稼働データの例だと故障の発生は不良品発生と同時期、停止している時間は加工材料が届いていないから。これらが事象の本質を適切に理解する作業=分析となります。本来の分析を行わず、表面の事象だけで捉えると、不明瞭/不可解だったり、誤った対応をしてしまうことになります。

分析の目的からすると、大量のキレイな資料を作って終わり、ではなくその後の意思決定や行動に繋げることが重要です。売上が上がっているのは主力のA商品ではなく、機能とターゲットを絞ったB商品であることが判明した、そのため営業人員をB商品に固めよう、といった意思決定に繋げることです。B商品であることが判明した、で終わりであれば分析の目的は果たしていません。

定義と目的がわかった上で、本題。分析の3基本要素を扱います。分析の華やかなフレームワークではなく、根底の基本の考え方になります。

①規模感を知る

分析の際に規模感を知る、とはどういうことか、と思われたと思います。これは分析の目的である意思決定に繋げるところとリンクします。分析を行うということは意思決定をして、ビジネスならば何か成果に繋げていく必要があります。例えば売上を上げる、業務を効率化する、費用を減らす、など。そうすると、規模、量、シェアが少ない/小さい領域を一生懸命手間をかけて分析しても効果が薄いです。これは分析の技術というかそもそもの対象をきちんと設定することの重要性を述べています。分析が得意な人、ツールに詳しい人ほど嵌りやすい罠ですので心に留めて置いてください。極端にいうと、売上の1%を挙げるために分析の人員の50%を割くのは適切な考え方ではない、ということです。(公共性が高かったり、最先端の研究開発、倫理的なテーマなどの場合は例外かもしれません)

②分割する

分析の文字の中に含まれているとおり、「分ける」ことです。全体を見ているだけだと混然一体となっているため茫漠としていますが、個々の要素に分けて分解することで本質を適切に捉えようという考え方です。ポイントは、何でもかんでも分けるのではなく、「違いが出るかどうか」で分けます。加えて意思決定に役立つかどうかも重要です。分け方は仮説でもOKです。例えば、売上を午前と午後に分けてみます。午前と午後で客層が異なって売上が違うかもしれません。またシステム開発費用を開発費、PM費、保守運用費に分けてみます。それぞれ期間や人員に違いが出そうです。そして分けて考えた上で、全体の中の位置づけを考えることが必要です。重要なのか重要でないのか、大きいのか小さいのか。分けることで全体を把握します。

③比較する(項目、時系列)

最後に比較する、です。これは②と合わせ技で用いることが多く、かつ最も馴染みがある考え方になります。身の回りには比較が溢れています。他の人と比べて身長が高い、体重が軽い。2つのリンゴが大きい/小さい、他の会社より給料が高い/安い、昔より今の方が気温が高い/低いなどなど。ポイントは、比較対象を合わせて意味のある比較を行う(アップル・ツー・アップル)です。例えばある定食屋の丼定食の価格を比較するときに、全体の定食単位で比較するのではなく、ご飯、汁物、主菜、副菜、漬物の要素に分け、他の定食屋のご飯とご飯、主菜と主菜で対象を合わせて比較するということです。時系列で価格を比較する場合は、今年と去年、先月と今月、先週と今週と対象を合わせます。③は基本的な考え方かもしれませんが、基本的過ぎるがゆえに忘れがちな考えになります。

今回は、分析の定義と目的、3基本要素を紹介しました。高度な統計分析や機械学習、BIツール活用などに一足飛びに行くのではなく、まず足元の基本要素から改めて見つめ直してみませんか。