人々はどう協調行動をとるのか(ゲーム理論)

今回は「儀式は何の役に立つのか」2003年/新曜社/マイケル・S-Y・チウェ著/安田雪訳、からゲーム理論を取り扱ったテーマを扱います。詳細な解説や学術/理論的な観点は本書を読んで頂くとして、かいつまんでビジネスにも役立ちそうな箇所に焦点を当てて紹介します。私が本書を初めて読んだ時、このような観点で物事を捉えたことがなかったので、知的好奇心を揺さぶられました。

まず本書の主張を端的にいうと、

です。

つまり、以下2つの状況では協調行動が異なる、ということです。

①人々が情報をそれぞれ知っている

→共通知識を生み出さず。協調行動を必ずしも促さない

②人々が情報をそれぞれ知っていると皆が知っていることが衆知である

→共通知識を生み出し、協調行動を促す

※共通知識・・・ある情報が人々によって共有されていること自体が周知になっている状態

人々は共通知識を持つことを契機として、他の人と同じ行動をする/一緒に過ごすことを好む傾向があります。更に他の人が参加していれば参加しているほど自分も参加したいとより一層思うようになります。人気があるものに遅れを取りたくない、自分だけ除け者になりたくないという気持ちがあるからです。

共通知識を契機、と書いたのはその後の協調行動の起点となるからです。私とあなたが存在するときに、AAAという作品の映画があるとします。共通知識になるためには、4つの状況をクリアしなければなりません。

1)私がAAAを知っている
2)あなたがAAAを知っている
3)あなたがAAAを知っているということを私が知っている
4)私がAAAを知っているということをあなたが知っている

情報の非対称性がある場合、例えば街で私が既にAAAを視聴した前提で、「あなたがAAA作品を上映している映画館から出てきたのを私が一方的に見かけた」状態であった場合、3を満たすものの4を満たさないため、共通知識とはなりません。

共通知識を生み出すためのイベントとして、以下が本書で挙げられています。
・国王の大行進
・共同体の儀式(皇位継承、革命祭)
・ゴールデンタイムに流されるアメリカのスーパーボウル
・リステリンの「口臭」広告キャンペーン
・円形に椅子が並べられた市議会場
・一望監視刑務所(パノプティコン)
他には、大晦日の紅白歌合戦、小中学校の運動会、七五三、初詣などがありそうでしょうか。

さて、ビジネスの現場で今回のテーマを横展開してみます。(協調行動の中身がバラバラになる、ことは実際に起こり得ますが、今回はその論点は除外)社内の人々に協調行動を起こしてもらうために、イベントを開き共通知識を得てもらうことを考えます。具体的には全社員合同の対面会議。社員が一堂に会している中で役職者から対面&口頭で方針や目標を伝えます。最もわかりやすいイベントですね。これを行うことで、社員全員が自社の方針や目標を知ることになります。対面なので、あなたが知っていることを私も知っている、状態です。(最近では全社員合同であってもweb会議であったりすると、雰囲気や熱気を感じ取ることができず共通知識とはなりにくいかもしれません)こうすると、一緒に行動することを好む、他人に乗り遅れまいとして協調行動を起こしてもらえることになります。

極めて簡単に内容を纏めてみました。言語化されてみると確かにそうだな、と思われる部分はあったのではないでしょうか。組織や共同体の人々の認識を揃える、という意味でも示唆のあるテーマでした。