コスト削減の全体像
前回は、コスト削減の第1歩としてコストの可視化、直接材/間接材について取り上げました。今回は、コスト削減の全体像を見ていきます。コストの可視化からどう進めていくのか、を全体で捉えます。
大きくステップは6つに別れます。
①コストのデータ整理
②削減対象の特定
③削減アプローチの設計
④削減余地の算出
⑤削減の実施/計測
⑥仕組化/定着化(今回は割愛)
①コストのデータ整理
コスト削減の検討単位を定めるためのステップです。社内の経理システム上では勘定科目として印刷費や販促費などとコストは計上されて存在しています。しかし、これだけでは粗い粒度なので、削減対象の特定や削減アプローチが設計できません。「どの相手から」「いくらで(単価)」「どれぐらい(数量)」「いつ」「どのような条件で」を一覧にして整理する必要があります。これは請求書などだけではなく、元々の契約書で確認する必要があります。契約書まで遡る必要があるので想定以上に時間を要することもあります。①のステップの中で、前回取り扱ったコストの可視化を行います。
②削減対象の特定
前回も少し取り上げましたが、どの項目を対象とするか/優先順位をどう決めるかを整理します。基本的には「金額が大きい×削減の容易さ」で決定します。削減の容易さをどのような視点で見るか、ですが4視点があります。1)コスト構造(固定費か変動費か) 2)ベンチマークの可否(比較が難か易か) 3)取引頻度(単発か長期か) 4)サプライヤーの業界像(競争的か独占的か)。これらをベースに対象とする費用の優先順位を特定します。
③削減アプローチの設計
大きくは2方向あり、「サプライヤー側への働きかけ」か「自社での分析/検討」になります。前者では具体的には相見積もり、原価積上、集約発注などが挙げられます。後者では具体的には自社工程の見直し、代替手段の検討、VE(バリューエンジニアリング)/投資対効果分析などが挙げられます。これらのアプローチのうち、適切と思われるものを複数組み合わせて削減までの道筋を練っていきます。
④削減余地の算出
②と③を元に、どれぐらいの効果が見込まれるかを算出します。効果の算定は「前年度の単価×数量」の面積の増減で算出します。アプローチを実施したときにどれぐらいの効果が見込まれるかを想定で時間軸毎に数値化しておきます。活動自体の効果なのか、円安などの外部効果なのか、などを線引きして算出することが必要です。
⑤削減の実施/計測
自社での分析/検討は、内部で実施できるため粛々と進めていきます。一方で、サプライヤーとの接触が必要な場合は、交渉が必要になります。お互いの購買力に応じた立ち位置や、商談の準備、交渉のスケジュール設計などを行い削減効果を出していきます。実施してコスト削減効果が出た項目は、④の算出式にもとづき積み上げていきます。目標とするコスト削減の額や率に対してどの程度積み上がっているかを可視化しておきます。
コスト削減をする際は、大まかにはこの①~⑤の流れを経ます。顧客企業のコスト削減の活動を観察していると、①と②のステップが中途半端になりがちなのと、③が体系的に実施されていないケースが多く見受けられるように感じます。