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2025-7-4 経営管理 マネジメント会計

キャッシュ・フロー経営 利益とキャッシュの違いに気づいていますか

キャッシュフロー経営、というと聞きなれない方も多いかもしれません。商売を為された方であれば、お金が最も大事だから何となく方向性は理解できる感じでしょうか。損益計算書で経営を把握されている方なら売上と利益が最も大事だ、と反論を受けるかもしれません。大きな企業にいて業績も好調だと、利益とキャッシュは別に分けなくても一緒では?という感覚になってしまうかもしれません。しかし、利益とキャッシュはかなり異なるものなのです。

家計簿から気づくキャッシュの考え

家計簿をつけていると、基本的に給料という名の収入と、日々の生活費や家賃、保険料などを支払う支出が存在することにすぐ気が付きます。クレジットカードを使っていると、モノは手元にあって支出を計上しているけれども支払いは翌月以降、という局面があったりします。支払いが一定期間猶予されているので支払日まではお金が減っていない状態です。クレジットでの支払いが大半を占める方は支出のタイミングとお金の支払いのタイミングが乖離するため、収入/支出と支払い時期を分けて考える重要性に気づかれている方もいらっしゃると思います。

企業では更に複雑になるキャッシュの流れ

企業では、買ったものの支払いを保留する買掛金や売ったものを後で回収する売掛金、といったことだけでも売上/費用と支払い時期の乖離が生じます。これは会計上では発生した瞬間での発生主義で計算しているのにも関わらず、キャッシュは実態ベースでの動きを捉えているからです。そのため、売上/費用の差分で計算される想定されるお金の増減と、実際にキャッシュ残高をみたときに差が生じます。

意外と即答できない質問

1つ利益とキャッシュを本質的に捉えた事例をお話します。企業を訪問してキャッシュ・フロー経営の話をするときに、現場の方に質問をすることがあります。

「企業は赤字になってもなぜ潰れないのですか?」

これは意外と即答できない方も多いです。しかし、倒産の明確な定義を知らなくてもざっくりと答えられる回答があります。それは「赤字でもお金が尽きていないから」。赤字ということは企業全体で1年間でお金が減っていると大まかには言えると思います。売上/利益は単年でのスナップショットであるのに対して、お金は毎年資産で積み上げていく年輪です。そのため、単年で赤字であっても、積み上げた資産=お金が十分にあれば企業が潰れることはありません。結果として、売上/利益は重要だけれども、最終的に企業が生き延びるためにはお金が最も重要だ、ということが言えます。これがキャッシュフロー経営の考えです。

キャッシュ・フロー経営でよく出てくる表現

■勘定合って銭足らず/黒字倒産

これは、帳簿上は黒字で利益が出ているように見えても、実際にはキャッシュが足りずに事業継続が困難になる状況を指します。例えば、売掛金の回収が遅れたり、在庫が膨らんで資金が寝てしまったり、高額な設備投資によりキャッシュアウトが先行した場合など、現預金が底をつけば、黒字であっても企業は倒れるのです。文字通り、勘定は合っているが銭が足りていないという状況です。これも利益とキャッシュの違いを明確に理解していないが故に起こってしまう現象です。

■利益は意見、キャッシュは事実(Profit is opinion,cash is fact)
利益は会計基準や引当、減価償却、棚卸資産評価など、会計上の判断が多く関与し、経営者の裁量が入って変化する可能性があります。そのため、経営者の意見が入ったものが利益、というわけです。一方で、キャッシュは現金の出入りという事実そのもので操作の余地が少なく、経営の状況を判断するには客観的で信頼できます。なのでキャッシュは事実と言われます。ソフトバンクの保有する株式やファンドの評価、含み益や含み損といった評価の仕方で決算に反映するかどうかが決まって利益が大きく増減したり、東芝の会計基準を逸脱して減損を見送り、実態以上に利益を出していたケースなど、利益には意見が入ります。

まとめ

今回は、キャッシュ・フロー経営の基本について、利益とキャッシュの違いに着目しながら解説しました。まずは利益とキャッシュは違うという視点を持つことが、キャッシュフロー経営を理解する第一歩です。次回はもう少し専門的なお話を展開していきます。

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