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2025-9-5 戦略 統計と分析

「成功確率を上げるか、行動量を増やすか ― 負の二項分布に学ぶ成果の方程式」

今回は、統計学をビジネスに活かす目的で、「負の二項分布」を扱っていきたいと思います。負の二項分布の数学的説明などは省き、ビジネスへの活かし方を整理していきたいと思います。まず負の二項分布とは何か、ということですが、「ある成功確率pの試行を繰り返すとき、r回成功するまでの試行回数の確率分布」となります。この堅苦しい定義を見るとあまりイメージが湧かないと思いますので、端的に言うと、

「成果を達成するまでに、必要な試行回数はどの程度か」

この問いに答えるものが負の二項分布の活用になります。統計学の活用というと少し難しく考えてしまいがちですが、具体的なビジネスでの事例を紹介していきますのでイメージが湧くかと思います。

【マーケティングの反応獲得コスト】

広告で集客して自社の商品を販売することを想定してください。この場合、どれぐらい広告を投入すれば自社商品が販売できるかがわからない場合、なんとなく広告を投入してしまっているケースがあると思います。完全な予測はできないですが、議論ができる統計的な数値根拠を作ることは可能です。見込み客がweb広告を表示してクリックして購入してくれる確率を、25%と30%と35%の3通りあるとき、3回購入してくれるまでに必要な広告表示数、と状況を設定します。このとき、負の二項分布を使って広告表示数=試行回数とすると確率はグラフのように変化します。

成功確率が高いほど、3回購入するまでに必要な広告表示数(試行回数)が少なく済むことがわかります。一方で、成功確率が低くなるほど、3回購入するまでに必要な広告表示数(試行回数)が多く必要なことがわかります。このグラフを活用することで、以下のような損益試算が可能になります。

■試算に用いる項目

〇売上
・1回辺りの商品平均単価1,000円×購入3回=3,000円

〇費用
・web広告表示1回50円

〇前提
・購入の確率は35%で一定とする
・購入3回を目標とする

〇期待費用 平均(期待確率×費用)
・期待確率は8.57回(成功回数÷成功確率=3回÷35%)
・期待費用は8.57回×50円=429円
◇補足
・1回の試行で成功する確率がpとして、成功するまでに必要な試行回数の期待値は1/pです
・コインの表が出る確率が50%なら、平均して2回に1回表がでる→1/0.5=2回
・r回の成功の場合は、r×1/p=r/p →成功回数÷成功確率となります

〇期待費用 80%確率(期待確率×費用)
・期待確率は12回(累積で80%を超えるのは9回目なので、購入回数3回を足して12回)
・期待費用は12回×50円=600円
◇補足
・購入回数3回を達成する確率が80%のラインにおける費用という意味

■利益試算
〇平均ベース(平均的に見込める利益で中長期的な期待値)
売上3,000円-費用429円=2,571円

〇80%達成ベース(リスクを考慮した80%の確からしさで達成できる目安)
売上3,000円-費用600円=2,400円

どちらを使うかは状況次第ですが、なんとなく広告を使えば売上が上がって利益が出るだろう、から具体的な利益の試算できました。この試算をベースに、成功確率を上げる努力(広告の精度改善)と、行動量を増やす努力(広告投下量増加)のどちらに投資するかを判断する際の根拠になります。これを活用できる機会は他にもあるため、是非ビジネス現場でも活用下さい。

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